世界に類を見ない 山梨県北杜市のメガソーラー実証実験を見にゆく!

 大人の社会科見学、ということで雪のなか目の当たりにしてきました、メガソーラー。中央自動車・道長坂I.C.を出ておよそ5分のところにそれはあります。正式名称は「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究北杜サイト」です。(以下、北杜サイト)

 

 こんな雪が降るようなところでメガソーラー?と思いましたが、ここ北杜市は日照時間が日本一なんだそうです(全国年平均2120時間に対して年平均2250時間以上*1 )。日射量に依存する太陽光発電にとっては最適です。加えて、標高約650 mであり夏でも比較的冷涼です。よって、高温になると変換効率が低下してしまう「結晶系Si太陽電池」でも、より多くの発電量を得ることができます。

 NEDO*2 から委託を受け、北杜市とNTTファシリティーズが2006年度から2010年度の5カ年、実証実験を行っています。サッカーグラウンド8面ほどの面積に2MW(2000kW)級の太陽光発電システムが構築されています。ところで、この2MW(メガワット)級とはどのくらいの発電量かというと、年間発電量約2,000,000kWh/年です。一般家庭の消費電力を約3,500kWh/年とすれば約570軒分となります(北杜市公表)。

 目的は大規模太陽光発電の①運用データから事業性や環境性を評価すること、②電力系統側への影響 を減らすこと*3、③導入指針となる手引書を作成・一般公開することで、太陽光発電の普及拡大を目指しています。

 

 ここ北杜サイトでは、2つの「世界初」に出会えます。

 まず、太陽電池の導入種類数の異例な多さです。国内外9カ国から27種類の先進的な太陽電池が設置されています。様々なメーカーの各種太陽電池にはそれぞれ、発電効率や、温度・光の波長の違いによる出力特性などの、個性があるのです。ここには、現在市場に出ているほとんどの種類が集められています。そして、それぞれの強み・弱みを比較するほか、同じ太陽電池でも設置角度などの条件による違いが研究されます。

 もうひとつは、今回新たに開発された先進的架台です。現在、太陽電池を載せる架台としては、コンクリート基礎を用いるものが一般的になっています。しかし、この先進的架台は、杭を地面に打ち、そこに鋼管をつなげて太陽電池を支えます。効果として、製造に伴うCO2排出量40%削減*4 、土壌への影響低下、コストの削減、工期の短縮化がされます。

 北杜サイトに見学に行って一番インパクトがあるのは、やはり様々な太陽電池を比較できることでしょう。上の写真でもわかるように、太陽電池それぞれの外観の違いは、肉眼でも確認できるものがあります。下の説明パネルを見ると、どの太陽電池が何という種類なのかがわかります。私は見学に行ってみてから、後悔しました。もし予備知識として、それぞれの太陽電池の特色がわかっていたら北杜サイトをより楽しめたのではないか、と。そこで、復習になるけれど産総研のHPを基に、以下に各種太陽電池の大まかな特徴をまとめてみました。

 北杜サイトの導入種類は主に、結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池の3つに分けることができます。

 

 まず、結晶シリコン太陽電池。結晶の名前の通り、シリコンの原子が規則正しく整列しており、シリコンの能力を最大限発揮できる形となっています。結晶シリコン太陽電池の仲間は、下記です。

 ・単結晶シリコン太陽電池

素子全体にわたって結晶整列が保たれた形。もっとも古くからある太陽電池。高価格・高変換効率(約20%)。写真1では右側1番手前など。

 ・多結晶シリコン太陽電池

直径数mm程度の小さな単結晶が集まった形。現在市場で主流となっている太陽電池。単結晶に比べて、省エネルギー・安価に製造できるが、変換効率は少し劣り15~18%。写真1では右側手前から2番目など。

 

 次に、薄膜シリコン太陽電池。薄膜の名前の通り、厚みが1μm以下(結晶シリコン太陽電池の100分の1の厚み)のシリコン膜を用いています。シリコンの節約になる上、量産性が高いので、低コスト化の余地が大きくなります。そのかわり、変換効率は低めで7~10%で、設置面積に余裕がある場合向けです。市場拡大のためには、変換効率の改善の他、室内など弱い光で発電できる種類や、軽量さを活かした製品展開が期待されます。写真1では左側1番手前やその後ろなど。

 

 最後に、化合物系太陽電池。シリコンの代わりに、主にCu,In,Ga,Se(銅、インジウム、ガリウム、セレン)などの元素を混ぜ合わせて使います。薄膜シリコン太陽電池の長所と、高い発電効率を併せ持つタイプです。材料や製造法の選択肢が豊富で、用途に合わせて様々な性能・形態の製品を製造できると見込まれています。これにより電気自動車や建造物などへの組み込み用途向けとしても期待されています。写真1では右側手前から4番目の小さなものなど(ちなみに、「そらべあスマイルプロジェクト」で寄付されるものと同じだと思います)。

 

 以上、北杜サイトの魅力説明と各種太陽電池のまとめを述べました。北杜サイトの実証研究は22年度までと、終了間近ではありますが、引き続き太陽光発電所として運用していく予定とのことです。見学のための展望台は基本的に自由開放されていますが、毎月2回は、定期見学会を開催しているとのことです。

(北杜市関連ページ

 

 ご興味のある方は、機会があれば訪れてみてください。周辺にはサントリーウイスキー工場やシャトレーゼ工場 (どちらも要予約・無料) などもあり、とても楽しめました!

レポート:桶田 利紗瑛

(注)

*1、NTTファシリティーズ, http://www.ntt.co.jp/journal/1004/files/jn201004052.pdf

*2、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

*3「電力系統への影響」とは、発電量の不安定な太陽光発電を電線につなぐことにより、電圧等が変動して電気の質が落ちることを指します。これにより照明や映像機器のちらつき、回路の焼損等、各種機器への影響が懸念されるため対策が必要です。

*4、NEDOプレスリリース

(参考)

独立行政法人産業技術総合研究所「さまざまな太陽電池」

http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/types/index.html

NEDOプレスリリース

https://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/press/FF/nedopress.2009-12-02.7347534276/

北杜市「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究北杜サイト」

http://www.city.hokuto.yamanashi.jp/hokuto_wdm/html/environment/71827886913.html

「from NTTファシリティーズ」

http://www.ntt.co.jp/journal/1004/files/jn201004052.pdf

 

 

«一つ前のページへ戻る