ISEPが自然エネルギーで被災地支援を開始

4月4日に衆議院第二議員会館で行われた「つながり・ぬくもりプロジェクト」の記者会見
4月4日に衆議院第二議員会館で行われた「つながり・ぬくもりプロジェクト」の記者会見

 NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、各種協力団体とともに、ガスや電気などのライフラインの復旧が遅れている被災地を自然エネルギーで支援する「つながり・ぬくもりプロジェクト」を開始した。

 

 現在の支援内容は、太陽光発電による電気の提供、薪かまど・薪ボイラーによるお湯の提供、太陽熱によるお湯の提供の3つで、今後は、小型風力や小水力の活用も検討するとしている。ISEPが窓口となり義援金・ボランティア等の寄付を募り、寄付をする個人や企業は希望の自然エネルギーを選べる仕組みを導入する。

 

薪かまど
薪かまど

 太陽光発電システムは、自然エネルギー事業協働組合(レクスタ)が主体となり、ソーラーフロンティア等から提供を受けた1000kW規模のモジュールを、避難所、診療所、仮設住宅などに設置する。モジュールの他に、架台、パワコン、蓄電池、人件費などの設置費用、物資輸送費が必要で、1kWあたり約35万円の実費がかかる。

 

 薪かまど・薪ボイラーによるお湯の提供は、地元岩手の木質バイオマス研究会が行う。避難所でも簡単に設置できる薪かまどを制作・提供し、がれきや木材を燃料にお湯を沸かす。移動式薪ボイラー車は約2トンの貯湯タンクを備え、巡回風呂サービスを行う。薪かまどは1基約3万円。ボイラー車は、トラック借り上げ費用、お風呂キット購入費、移動の燃料代等で1台あたり約100万円かかる。

 

 太陽の熱で給湯するのは、ぐるっ都地球温暖化対策地域協議会だ。機器はソーラーシステム振興協会に加盟する太陽熱温水器メーカーが、1基あたり20万円の低価格で提供する。設置は同振興協会の指導で地元水道屋が行い、被災地の雇用や経済振興も促したい考え。太陽熱温水器は、晴天時には40度、曇天時でも20度の水温が確保できるといい、避難所やインフラ整備の遅れている地域で炊事や洗濯に活用してもらう。車両借用費、ガソリン代、人件費、ボランティアの現地生活費等が必要で、機器費用のほか1件あたり30万円程度を要する。

 

 設置場所の選定は、被災範囲や状況が広範囲かつ甚大なため、実際に現地に入りニーズを確認してから行うという。見込みの支援期間は、仮設住宅への支援を含め3年程度。システムは現地に無償譲渡する予定だが、不要後は回収リユースも検討中だ。

 

 本プロジェクトの現在の協力団体は、上記の他、エナジーグリーン株式会社、WWFジャパン、森と風のがっこう(岩手県葛巻町)など。ISEP代表の飯田哲也氏は「自然エネルギーにはフレキシブルに対応できるシステムが多く、今回のような状況でも迅速にエネルギーの供給ができる。1台でも多く設置して復興を促すとともに、社会全体が安全なエネルギーにシフトするための布石としたい」と語った。また、プロジェクト参加によるPR活動なども歓迎といい、個人をはじめ、各種機器メーカー、施工会社、輸送会社など多くの企業の参加を呼び掛けている。

 

写真・文:中島まゆみ

 

東日本大震災「つながり・ぬくもりプロジェクト」

http://www.isep.or.jp/tunagari-project.html

 

«一つ前のページへ戻る