現存する原生林を保護して生物多様性を守れ

Photo By permanently scatterbrained
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 熱帯雨林の開発や土地転換などの影響を包括的に調査した結果が「ネイチャー」誌で紹介された。人間の手が入っていない原生林は、最も高いレベルの生物多様性を保持しており、熱帯のさまざまな生物の生存に欠かせないという。シンガポールやオーストラリア、スイス、イギリス、そしてアメリカの研究者たちが調査に参加した。

 

 木材伐採や農地のための急速な開発により原生林は急速に失われつつある。このように失われていく原生林の価値については議論されているが、今回の調査もこの点を焦点にしている。

 

「近年、科学者の中には荒廃した熱帯林でも高いレベルの生物多様性を保持するとの意見もあるが、我々の調査ではそのようなことはほとんどみとめられなかった」と、今回の調査の主執筆者であるシンガポール大学のルーク・ギブソン氏は述べた。

 

 熱帯地域28カ国の138に及ぶ科学的研究からギブソン氏らが導き出した情報によると、再生された森林と開発された森林で生物多様性を比較すると、開発された森林の多様性は著しく低いことがわかった。

 

「原生林の代わりになるものなどない。熱帯林では、どのような開発であれ必ず生物多様性を減少させる」とギブソン氏は言う。

 

 選択伐採という、ある特定の森から限定された木のみを機械伐採する方法は、現在のところ一番ダメージの少ない開発方法のようだ。しかしながら、保護区の設定が人間の手の入っていない原生林を保護するのに決定的な方法であることに変わりはない。ただ、現状では多くの保護区が安全というには程遠い。規模が縮小されたり、開発されたりする保護区が増えているという。現存する保護区を守ることが原生林保護にとって重要なミッションであることは間違いない。

 

 アメリカやアフリカの熱帯林と比較し、東南アジアの熱帯林における生物多様性の損失は多大だと調査は示唆している。多くの保護区が“ホットスポット”であり、もっとも保護すべき地域だという。世界の熱帯雨林の中で、東南アジアの熱帯雨林がしめる面積はいちばん小さく、森林破壊のスピードはいちばん速く、人口密度はいちばん高いという。

 

 2050年には世界人口は90億人に達すると予想されるなか、熱帯雨林が人間の開発対象になる危険はますます高まるだろう。「人間の干渉を制限し、地球上に残る原生林を保護していくことは不可欠。熱帯地域の生物多様性の将来はそれ次第だ」とギブソン氏は結論付けた。

 

翻訳サポート:中野よしえ

文:温野まき

 

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