洗濯機から生まれる海洋汚染 化学繊維から生まれるプラスチック微粒子に要注意!

Kanapou Bay, Kaho‘olawe, Hawaii by NOAA's National Ocean Service / CC
Kanapou Bay, Kaho‘olawe, Hawaii by NOAA's National Ocean Service / CC

 地球環境を破壊する原因の多くは、先進国に住む私たちのライフスタイルに起因する。大量消費型の暮らしから生まれるいろいろな“ゴミ”が自然環境に不可逆的な影響を与えてしまうのだ。化石燃料の大量消費から生まれる二酸化炭素や、オゾン層の破壊を生みだしたフロンガス、深刻な放射能汚染を引き起こした原発も、使用済み核燃料というゴミを生みだし続ける。

 

 東日本大震災を体験した日本で大きな問題となっているのは、大量に生まれたがれきという“ゴミ”の後始末だ。そのなかには被災地にそのまま積みあげられたものもあれば、太平洋へと流れ出て他国の海岸線を汚すものもある。日本から流れてきたと思われる小型船や冷蔵庫が、米ミッドウェー諸島付近で見つかったように、大量のがれきは3年後、アメリカ西海岸に到達すると言われる。私たちの豊かな暮らしを支えていたモノが、逆に“汚染物質”となって襲いかかってくるわけだ。

 私たちに襲いかかるのは目に見えるゴミだけではない。日々、不気味なニュースに悩まされる放射性物質のように、目に見えない汚染物質も存在する。これから紹介するのは家庭の洗濯から生まれるプラスチック微粒子による海洋汚染だ。

 

 マーク・アンソニー・ブラウンが率いる国際研究チームが、赤道から極地方まで6大陸を調べた結果、生物の生息域に1ミリ未満のプラスチック微粒子が蓄積されていることがわかった。海洋生物がプラスチック微粒子を飲み込むことで、その生態系に大きな影響を与える可能性も否定できないという。 

 

 発表された調査結果を見ると、日本近海を含む18の海域の汚染が指摘され、そのほとんどがモノが豊かで人口が集中しているエリアに接している。そのエリアで見つかったプラスチック微粒子を分析すると、下水を通して海に排出されるポリエステルやアクリル繊維のくずに近いことがわかった。彼らによれば、洗濯機で一着の服を洗濯すると、約1900の繊維が排水に放出される。その結果から判断すると、生態系に蓄積している汚染物質は、洗濯に起因するものであると思われるのだ。

 

 私たちの衣服から生まれたプラスチック微粒子が、河川を通して海に流れ込み、近海の魚に取り込まれ、私たちの食卓へと帰ってくる。それによって私たちの健康にどのような影響が出るかはわからない。しかし、私たちを取り巻く自然環境を豊かに保つためにも、何らかの対策は必要だ。下水処理の高度化だけでなく、天然繊維を増やしたり、化学繊維から出るくずを減らす工夫をするなど、デザイナー、服飾メーカーなども連携した幅広い対策が望まれるだろう。

文:上岡 裕

 

<<参照リンク>>

Accumulation of Microplastic on Shorelines Woldwide: Sources and Sinks

From the Washer to the Sea: Plastic Pollution

 

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