シンポジウム ゼロエミッション建築の最前線

 先進各国は、人為的に発生する温室効果ガスによる気温上昇が、産業化以前に比べて2℃を超えないようにすべきであるとの認識から、2050年までに1990年頃に比べて80%以上の温室効果ガス削減を目指しています。我が国の環境省も「温室効果ガス削減目標を実現するための中長期ロードマップ」を策定中であり、この最新の報告では、2015年より温室効果ガス排出をネットでゼロにするゼロエミッション住宅の普及を開始し、2030年以後は全ての新築建築及び新築住宅をゼロエミッション化することになっています。そして2050年には建築、住宅ともストックを含めて全てゼロエミッション化することとしています。

 

 ゼロエミッション住宅の普及開始まであと4年と迫っており、社会全体が普及に向けて準備を始めるべき時期です。また、2050年にストックを含めて全てゼロエミッション化すると言うことは、100年以上の建築寿命を目指す我が国では、今日作る建築は全て改装によりゼロエミッション化できる骨格を持たなくてはいけません。従って、今日の建築活動は全てゼロエミッションを前提に行われるべきなのです。しかし一般の人にとってゼロエミッション建築は夢の世界のことのように思えますし、建築業界関係者の間ですら状況が認識されていません。

 

 一方ヨーロッパの国々では、既にゼロ空調建築が可能なレベルの住宅の断熱性能を義務化している国もあり、今後数年の内にヨーロッパ全体が同様の傾向を強めるものと予想されます。先行事例では、建築で消費するエネルギーよりも生みだすエネルギーが多いプラスエナジー住宅や、それらを組み合わせた街区も実用に付されており、ゼロエミッションは夢ではありません。

 

 また、ゼロエミッション建築は、とても快適な住環境が実現でき、健康促進の点でも有効である事が分かっています。昨今のエネルギー事情を考慮すると、遠からずコスト的にも優位であることが明確になると予想されますし、ドイツやスイスでは、建築の省エネ化などの対策が、経済政策的にも効果的であることが明らかになりつつあります。

 

 このような状況の中で、日本においても様々なグループが建築の高度な省エネ化やゼロエミッションを目指して活動し、問題を乗り越えながら成果を上げつつあります。技術や人材、企業の意欲、建設業界の潜在的な実力などの点からすれば、日本は建築のゼロエミッション実現に最も近い国の一つです。しかし、社会的な気運の盛り上がりに欠け、実施に向けた制度整備の不在など、本格的な取り組みに向けて障害があります。また、先進事例に取り組むグループ間でも、ゼロエミッションの概念や目標が共有されている訳ではありません。

 

 本シンポジウムでは、中小工務店、工業化住宅、一般建築の各分野で先行して課題に取り組む方々に現状報告をしていただき、会場を含めた議論を通して目標を共有すると共に、共通する課題解決に向けた行動の契機にしたいと思います。また、一般の方々に対しては、ゼロエミッションが避けて通れないものであると同時に、既に手が届く存在であること、ゼロエミッションを実現するための技術は、環境への負荷を低減し維持費を節約できるだけでなく、快適性が高く健康的な生活環境を実現できる技術でもある事を知っていただく機会にしたいと考えています。

 

【開催日】 2011年11月3日(木)13:30~17:30 

【対象】 住宅や環境問題に関心がある一般の方及び専門家

【会場】 埼玉県立浦和高校麗和会館(〒330-9330 さいたま市浦和区領家5-3-3)

【アクセス】 JR京浜東北線北浦和駅東口より徒歩10分(北浦和は新宿・東京よりJRなどで概ね30~45分)

【地図】 http://www.urawa-h.spec.ed.jp/yokogao/access.htm

【プログラム】

●基調講演:中村勉(工学院大学教授/日本建築学会低炭素社会特別委員会代表、JIA環境行動ラボ代表、中村勉総合計画事務所所長)

 「急ごう!原発を凌ぐゼロカーボン社会を」

●講演:村上敦(環境ジャーナリスト/フライブルク在住)

「ドイツを中心としたヨーロッパの超省エネ建築の動向報告と日本への提言」

●パネルディスカッション

超省エネ化に向けた建築激動期を前に、日本の建築界の各分野(在来住宅、工業化住宅、一般建築)で先導的な活動をされている方々にお集まりいただき、緊急の課題や日本のあるべき姿について議論していただきます

 太田勇(株式会社ミサワホーム総合研究所 環境エネルギー研究室長)

 熊野直人(清水建設株式会社 環境・技術ソリューション本部主査)

 早田宏徳(日本エネルギーパス協会代表理事/マングローブクリエーション代表)

 蓜島一弘(ハイシマ工業株式会社代表取締役)

 マテー・ペーター(自然のすまい株式会社代表取締役)

 講演者の中村勉教授、村上敦氏も参加。

 ファシリテーター:白江龍三(環境建築家、前橋工科大学大学院非常勤講師)

 

高校生及び一般の方を対象とした関連イベント(午前の部)

【開催日】 2011年11月3日(木)10:00~12:30

【会場】 埼玉県立浦和高校麗和会館

【プログラム】

●パネルディスカッション「浦和高校のエコ改修の考え方と現状報告」

 梶芳晴(梶芳晴建築設計研究所):浦和高校エコ改修の設計者 

 浦和高校在学生:エコ改修後の使い心地、住み心地、計測データなどの報告

 ファシリテーター:八代克彦(ものつくり大学教授)

●講演:早田宏徳(日本エネルギーパス協会代表理事/マングローブクリエーション代表)

“省エネ住宅伝道師”とも言うべき活動をしている早田宏徳氏が、高校生やこれから住宅を建てようとする一般の人に向けて、住宅をゼロエミッション化する時に何が大切か、なぜ今高断熱住宅が重要なのか、どんなメリットがあるか、国際情勢の中でどういう意味を持つのかなど分かりやすく説明します。これから家を建てようとする人必見です!

●講演:太田勇(株式会社ミサワホーム総合研究所 環境エネルギー研究室長)

「ミサワホームのライフサイクルCO2マイナス住宅  ~ゼロエミッションの先を見据えて~」

今直ぐ買えるゼロエミッション住宅の事例として、ゼロエミッションを超える性能を誇る最新のLCCO2マイナス住宅と今後のゼロエミッション住宅の展望について、高校生や一般の人に分かりやすく紹介します。

 

主催:日本建築学会埼玉支所

協賛:株式会社ミサワホーム総合研究所

後援:環境省関東地方環境事務所、埼玉県、(申請中)国土交通省、経済産業省資源エネルギー庁、日本建築家協会

 

【申し込み方法】

参加費無料

メール/TEL/FAXによる事前申し込み

Mail: s_gakkai@zpost.plala.or.jp

FAX: 048-861-2384 TEL 048-866-8257

宛先: 日本建築学会埼玉支所事務局

シンポジウム「ゼロエミッション建築の最前線」チラシ
ゼロエミッション建築の最前線・広告.pdf
PDFファイル 239.1 KB

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