予定の20倍以上も延焼してしまった、長野県霧ヶ峰での火入れ

奥に見える池のまわりが踊場湿原。左手の山も燃えてしまった
奥に見える池のまわりが踊場湿原。左手の山も燃えてしまった

 4月28日、長野県諏訪市の郊外にある霧ヶ峰で、「火入れ」の火が周囲の広い範囲に延焼する火災事故が起きた。火入れは草原が森林に変化するのを防ぐために、草原の草木を燃やすもので、熊本県の阿蘇山や、神奈川県の仙石原などでも行われている。

 

 霧ヶ峰では約10ヘクタールの火入れが計画され、周囲には延焼を防ぐための防火帯が設けられていた。しかし、火が予想外の強風にあおられ、約220ヘクタールもの地域に延焼してしまったという。

 

 この火災で大きな影響を受けたのが、国の天然記念物に指定されている踊場湿原(別名は池のくるみ)だ。約28ヘクタールに及ぶ湿原の1割に当たる約3ヘクタールが燃えてしまい、植物のスゲ類が丸く固まった姿が特徴的な「ヤチボウズ」も被害を受けた。

 

 火災後、現地では植物が芽吹き始めているものの、火災により、珍しい種類の湿原が燃えてしまったことや、外来植物が好むアルカリ性の土壌になってしまったことなどが心配されており、今後、植生への影響調査などが始められる予定だ。なお、火入れを行った実行委員会は、来年度以降の火入れを中止することを決めた。

 

文/岩間敏彦

 

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