ネガワットって何? 省エネによって生まれる新たな発電所

グリーンカーテン(杉並区役所) Photo by rockriver
グリーンカーテン(杉並区役所) Photo by rockriver

 いよいよ6月。記録的に早い梅雨入りということで、例年であれば1日も早い夏の到来を期待したいところですが、今年は少し事情が違います。福島原発の事故の影響により、暑さのなかで節電を迫られるかもしれない企業や家庭では、夏が来ることに戦々恐々としているかもしれません。

 

 政府は今夏、東京・東北電力管内の企業と一般家庭に対して一律15%の節電を呼びかけています。東京電力の8月末の電力供給見通しは5480万kW (東北電力への140万kWの電力融通を考慮済み)。仮に昨年並みの猛暑であれば、電力需要は6000万kW近くに達するため、一定の余裕を持たせた15%(900万kW相当)の節電という目標値となったようです。

 

 企業や家庭が照明をLED電球に交換したり、これまでムダ遣いしていた電気を減らすことは、他で使える電力を増やすという意味でも、発電するのと同じ効果があります。こうした考え方は「ネガワット」「節電所」などと呼ばれ、欧米では導入が進んでいる省エネ策の一つです。ちなみにネガワットとは、文字どおり電力の単位「ワット」の「ネガ」、つまりマイナスの電力、使われなかった電力を意味します。みんなの少しずつの節電努力の積み重ねで、ドラゴンボールの“元気玉”のように発電所を作り出すイメージでしょうか。

 

 1989年、米国・カリフォルニア州のサクラメント市では住民投票が行われ、トラブルの多かったサクラメント電力公社(SMUD、スマッド)のランチョ・セコ原子力発電所の廃炉が決定しました。原発がなくなることで電力需要を確保できなくなった電力公社はどうしたか? 新たな発電所は作らずに、需要側のネガワットへの投資を始めます。省エネ型のエアコンや冷蔵庫、LED電球への買い替えや、住宅の断熱工事のための低利融資や助成の推進によって、同市の電力消費は大幅に減ったといわれています。

 

 原発の廃炉というシナリオを経験したSMUDの取り組みは、日本でも大いに参考にすべきでしょう。一方で、メガソーラーなど自然エネルギー設備拡大の動きがありますが、節電所であれば今すぐの“稼動”が可能で、発電所の建設のようにコストや時間が莫大にかかるということもありません。今回からスタートしたこのコーナーでは、需要側・消費者側の電力消費を減らすことで総需要電力をコントロールする「デマンドサイドマネジメント」に注目し、節電所やネガワット発電所を作るのに役立つ、貢献するサービスや商品を紹介していく予定です。

 

PROFILE

加藤聡(かとう さとし)


エコロジーオンライン編集長。埼玉県出身。大学卒業後、編集プロダクション、広告代理店勤務を経てフリーライターに。環境・サステナビリティをメインテーマに、雑誌からWEB、フリーペーパーまで幅広く執筆中。担当書籍に『地域力 渾身ニッポンローカルパワー(講談社)』。

 

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コメント: 1
  • #1

    パパゲーノ (水曜日, 09 5月 2012 18:04)

    良いお話を有難うございました。節電イコール、無使用分の電力製造とは、燃料費の節減にも直結し、国家的メリットは大きいと思いました。

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