地球温暖化がもたらす影響というと、大気や海の温度上昇、あるいは異常気象の増加といった事柄が思い浮かぶ。しかし、最近の研究は、温暖化が私たちが立つ「地球の足元」にも影響を及ぼし、巨大な地震の引き金になりかねないという、看過できない警告を発している。世界の主要な大都市の直下で、気候変動が間接的に地震の発生確率を高めている可能性が指摘されており、私たちはこの新たな危機に対して、十分な備えができているのだろうかという問いが突きつけられている。
💧 アルプスの微震が示す「水の力」
気候と地質現象との関連性を示す最新の研究として、2025年夏に発表されたスイス地震学サービスの調査が注目を集めている。この研究は、ヨーロッパアルプスに位置するモンブラン直下の微細な地震が、2015年の熱波による氷と雪の急激な融解と関係していることを示唆している。
溶けた大量の水は地面に浸透し、地下深くの断層帯にまで達した。この水が「潤滑剤」のように働くことで断層の動きを助け、小さな地震活動を引き起こしたと考えられている。この種の地震活動はその後も高い水準で続いており、将来的に大きな地震が発生するリスクを高めているという。地球を構成する巨大な岩盤であるプレートの動きは、わずかな力の変化にも敏感に反応するのだ。
☔ 大都市を襲う「水の重圧」と「解放」
このアルプスでの発見は、東京やサンフランシスコ、ロサンゼルスといった、過去に巨大地震に見舞われた活断層の上にある大都市にも、大切な教訓を与えている。これらの都市では氷の融解は大きな問題ではないが、「水」が断層に影響を及ぼす別の仕組みが存在する。
例えば、気候変動の影響でより速度が遅く、大量の雨を降らせるようになった台風が東京を襲うと、その大量の雨水が地面に浸透し、活断層に流れ込む。活断層がまさに巨大地震を起こす寸前の状態にあるとき、このわずかな水の浸透が、最後の引き金となる可能性が懸念されている。
さらに、カリフォルニアでは、気候変動によってより多くの水蒸気を含むようになった「大気の川（Atmospheric Rivers）」と呼ばれる気象現象が、激しい豪雨と洪水を引き起こしている。この豪雨が引き起こす土砂崩れや地盤の侵食は、断層にかかっていた地層の「重さ（負荷）」を取り除くことにつながる。この負荷の解放もまた、地震のタイミングを早める要因となりうることが、台湾やハイチの過去の事例からも指摘されている。
🧊 氷の融解による「揺れの解放」
気候変動が地震活動に最も明確な影響を与えているのは、氷床が大規模に融解している地域である。アラスカやグリーンランドでは、巨大な氷の塊が失われることで、地殻にかかっていた「重し」が取り除かれ、その下の断層が動きやすくなっている。
現在、グリーンランドの氷床は驚くべき速度で溶けており、その重さが減ることで、何千年もの間、氷の下で蓄積されてきたひずみが解放され、マグニチュード8クラスの巨大地震が発生する可能性が懸念されている。これは、約8,000年前にスカンジナビアの氷床が溶けた後にノルウェー沖で発生し、巨大な津波を引き起こした事例と似ている。
⚠️ 今後の備えと現実
研究が示すのは、気候変動がこれまでになかった新たな地震を生み出すわけではないが、将来いつか必ず起こる地震の発生時期を、早めてしまう可能性があるということである。私たちは、地球温暖化が「熱」や「水」だけでなく、「地面の揺れ」という、私たちの足元の安定性にも影響を与えているという現実を受け止め、都市の防災計画やインフラの整備において、この新たなリスクを真剣に考慮する必要がある。
＜関連サイト＞
Massive climate-induced earthquakes are brewing beneath our biggest cities. Are we prepared?
翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部（AIを使用）
