CGアニメで描く現代の昆虫記 『ミニスキュル ~森の小さな仲間たち~』

© MMXIII Futurikon Films – Entre Chien et loup - Nozon Paris – Nozon SPRL – 2d3D  Animations. All rights reserved.
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世界100ヵ国以上で愛される、森の小さな仲間たちが日本上陸――。フランスの美しい風景にCGを合成して作られたアニメ映画『ミニスキュル ~森の小さな仲間たち~』が、全国のイオンシネマで上映中だ。同作品は、森で暮らす個性豊かなムシたちの生態を魅力たっぷりに描いたアニメーション。ヨーロッパでは2008年からテレビシリーズが始まり、日本でも今年3月まで、NHK Eテレで放送されていた。

145分のショートストーリーであるテレビ版に対し、89分にスケールアップした劇場版は、人間が落とした角砂糖をめぐる、黒アリと一匹のてんとう虫による冒険と友情の物語。実在する南フランスの国立公園で撮影された美しい風景の中で、さまざまなムシたちが、本物さながらに生き生きと動き回る。動きや生態がリアルに再現されている一方で、ムシの容姿については可愛らしくデフォルメされている。リアルとフィクションの真ん中に位置するファンタジー。それが『ミニスキュル』の世界観だ。

 

監督を務めるエレーヌ・ジロー&トマス・ザボ夫妻は、「(美しい自然とその中に生きるムシたちの世界を描くことで)自然界の生態系を知ってほしいし、自然に対して“夢”と“愛情”を持つことの重要性を伝えたかった」と語る。

 

自然を舞台にしているからこそ、環境問題について考えることも忘れていない。劇中でムシたちが興味を示す、さびたソーダ缶やマッチ箱、虫よけスプレー、綿棒、つまようじといったゴミの数々には、環境汚染に対する問題提起や、リサイクルへのメッセージが込められている。さらには撮影方法にもこだわっており、二酸化炭素の排出を減らすため、撮影時の移動を減らしたり、撮影の多くを自然光で行うなど、環境に配慮した撮影方法「エコシューティング」を採用する。

登場キャラクターの1つ「クモ」の姿は、スタジオジブリのあの有名キャラクターのビジュアルそのもの!
登場キャラクターの1つ「クモ」の姿は、スタジオジブリのあの有名キャラクターのビジュアルそのもの!

キャラクターにはセリフが一切ないのも特徴で、ムシ同士の会話は「プープー」といった鳴き声や表情、動作だけで表現されるのみ。言葉を使わないことが、観る者をムシの世界にいざない、子どもたちの想像力を刺激する。また、こうしたサイレント映画的な演出も含め、各所に散りばめられた有名映画へのオマージュには、思わず大人の方がニンマリとしてしまうほど。昆虫学者・ファーブルを生んだフランス発のCGアニメーションは、本家の昆虫記同様、親子で学び、楽しむことのできる作品だ。

加藤 聡  編集者・ライター、エコロジーオンライン理事、太陽光発電所ネットワーク理事。大学卒業後、編集プロダクション、広告代理店勤務を経てフリーライターに。環境・サステナビリティをメインテーマに、雑誌からWEB、フリーペーパーまで幅広く執筆中。担当書籍に『地域力 渾身ニッポンローカルパワー』(講談社)ほか。

ミニスキュル ~森の小さな仲間たち~

http://minuscule.jp/

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