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地球上で最も寒く、人里離れた場所の一つである南極大陸。ここは、私たちの日常の活動から最も遠い「最後の聖域」のように思われてきた。しかし、ケンタッキー大学の研究者たちが率いる国際チームの最新調査により、その聖域にもプラスチック汚染が深く浸透していることわかった。なんと、南極大陸唯一の在来の昆虫が、すでにマイクロプラスチックを体内に取り込んでいることが確認されたのである。
❄️ 南極の「最強の住人」を襲う異変
この研究の主役は、ナンキョクユスリカ(Belgica antarctica)という小さな昆虫である。このユスリカは、体長わずか2〜6ミリメートルほどだが、南極の過酷な環境(極端な低温、凍結、脱水など)に耐えられる、地球上で最もタフな昆虫として知られている。彼らは南極の生態系において、栄養素を循環させるという非常に重要な役割を担っており、大陸の陸上生態系を支えるキーパーソンである。
研究者たちは、このユスリカの幼虫を南極の野生環境で捕まえ、高度な画像解析技術(マイクロフーリエ変換赤外分光法など)を使ってその消化管を調べた。その結果、野生で採取された一部のユスリカの幼虫の体内に、マイクロプラスチックの破片が入り込んでいることが初めて確認されたのだ。
✈️ 遠い場所からの招かれざる客
なぜ、人間の定住地から遠く離れた南極に、このようなマイクロプラスチックが届いたのだろうか。マイクロプラスチックは、私たちが日常的に使う衣類やタイヤ、プラスチック製品の破片が細かくなったもので、空気や海流に乗って、地球上のあらゆる場所に運ばれてしまう。砂漠の砂が風に乗って大陸を横断するように、この目に見えないプラスチックの破片もまた、南極の雪や水、土壌に降り積もっているのである。
このユスリカは、藻類や腐った植物などの有機物を食べて暮らしている。そのため、彼らが餌と一緒に、環境中に存在するマイクロプラスチックを誤って食べてしまったと考えられる。
⚠️ 生態系への影響と警告
この研究は、ユスリカがマイクロプラスチックを摂取したことによる短期間での直接的な死亡率は低いことを示している。しかし、実験室でユスリカの幼虫をプラスチックにさらしたところ、彼らがエネルギーを蓄えるために必要な「脂質(脂肪)」の貯蔵量が減少する傾向が見られた。これは、たとえ短期間で命を落とさなくても、プラスチックが彼らの体の調子を少しずつ悪くし、生存に必要なエネルギーを奪っている可能性があることを示唆している。
南極には陸上生物種がごくわずかしか生息しておらず、このユスリカが食物連鎖の中で果たす役割は極めて大きい。もしユスリカがマイクロプラスチックの影響で弱ってしまうと、彼らを食べる鳥や他の生物にもその影響が広がり、南極の脆弱な食物連鎖全体が崩壊する恐れがある。
この研究は、プラスチック汚染がもはや特定の海域や海岸線だけの問題ではなく、地球上で最も隔離された地域にある、かけがえのない生態系にまで到達してしまっているという、強い警告を私たちに発している。南極の最もタフな小さな命を守るためにも、私たちはプラスチックの排出を根本から見直す緊急の必要があるのだ。
<関連サイト>
University of Kentucky finds Antarctica’s toughest insect is already
eating microplastics
翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部(AIを使用)









