ドイツ南西部の村・フライアムト。この村では、住民が中心となって再生可能エネルギー事業を行っている。例えばバイオガス。ある農家ではこれまで飼っていた牛と豚を売ってお金を工面し、バイオガスの生産プラントと生産したガスで発電と熱利用を行う施設を建設した。畜産農家からは家畜の糞尿を譲り受けるなど、地域のさまざまなサポートのかいもあって、電力生産量は年間100万kWhにまで拡大。ヨーロッパでは広く採用されている電力の固定価格買い取り制度によって、投資額は12~13年で回収見込みだという。その他にも、住民同士がお金を出し合って風車を設置したり、木材として売れない部分をチップ化して熱源として利用するといった事業が行われ、人口約4300人の村のエネルギー自給率は100%を超えている。
森林資源や河川、温泉など地域の特性や資源を活かして電力を生産できることが再生可能エネルギーの特徴である。そして住民自らがお金を出し、運営する仕組みを通じて地域経済を活性化させる可能性もある。このような欧州の事例を参考に、地域の事情にあったエネルギー生産の意義を考えることは、東日本大震災を経験した日本にとって、非常に大きなヒントとなるはずだ。
文/田中一整
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