今年7月、資源エネルギー庁の「電力システム改革専門委員会」は、電力の小売、供給、送配電の3つに関する今後の指針をまとめた「電力システム改革の基本方針」を発表した。
内容は、地域独占での電力販売を解消させ、発電分野の自由化と、送電線を誰もが使えるようにしようという送電分野の自由化を目指そうというもの。現在、策定作業が難航している新たなエネルギー基本計画にも、同方針は盛り込まれる予定だ。
送電網の自由化は、発電した電力を自由に送ることが可能になるため、新たな電力会社が参入しやすくなり、電力料金が安くなる、自然エネルギーの利用が高まるといったメリットがある。その反面、電力会社による不当な料金引き上げが起きたり、過当競争によって電力の安定供給が危うくなるといった意見もある。
電力自由化が進むヨーロッパでは、送電線の開放と自然エネルギーの普及が一体となって進められてきた。現在の日本では、一部の電力会社が送電網を保有しており、借りるにもさまざまな制約がある。仮に、発電会社だけが増えても、作った電気が十分に届けられなければ意味がないことから、震災以降、発電・送電一体の自由化の議論が続けられている。
誰もが自由に走ることのできる道路のように、すべての電力会社が平等に使える送電網の実現。それこそが、今後の自然エネルギー普及のカギを握っているのだ。
文/田中一整
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