脱化石燃料! グリーン経済へ移行するデンマークのエネルギー政策

写真提供:デンマーク大使館
写真提供:デンマーク大使館

 日本と同様、1970年代にオイルショックを経験したデンマーク。その後の2つの国のエネルギー政策は対照的だ。日本が原発依存への道を選んでいったのに対して、デンマークは時間をかけて市民が原発の是非を検討し、それを反映して1985年には政府も原発のないエネルギー計画を選択した。そして再生可能エネルギーへのシフトへ大きく舵を切ったデンマークは、オイルショック時2%だったエネルギーの自給率は現在100%を大きく超えている。日本のエネルギー自給率が4%に留まっているのを考えればこの40年の国のエネルギー政策の違いがどれだけ大きな差になったかがわかる。

 

「デンマークはエネルギー消費を増やさず、CO2排出を抑えながら経済成長をしてきた」

 

 

 


 デンマークエネルギー産業機構のThomas Rønhard氏はグラフを見せながら話す。EUの中ではエネルギーの輸出国となり、グリーンテクノロジーの輸出もここ数年20%を超える成長率を示している。

 

 さらに、デンマークでは今後石油などの化石燃料に頼ることはエネルギー保安上も環境的にも無理があるとして、2050年までに化石燃料に頼らない社会にするという野心的な目標を掲げている。

 

「エネルギー政策は政党が変わっても大きな指針は変わらない。もちろんグリーン経済への移行はコストもかかるが、今やらなければ将来的にはそれ以上にかかる」

 

 Thomas氏が説明するようにデンマークのエネルギー政策は政党が変わってもぶれずに、ここ数十年、長期的なビジョンのもとに戦略的に進められてきた。

 

「グリーン社会への移行以外に道はないと」と説明するThomas氏
「グリーン社会への移行以外に道はないと」と説明するThomas氏

 Thomas氏は経済危機に陥っているEUの他国の例がありながら、デンマークが高い成長率を続けている理由を「技術力を磨いて市民、政府、産業界の意見を一致させて取り組んだこと。エネルギー消費量を減らすことと、供給システムの2つの側面で競争力を高めたことが成功の要因だ」と分析する。

 

 そしてそれらの技術の開発が大きなビジネスチャンスを秘めていることを忘れていない。

 

自治体、市民からのボトムアップでエネルギーシフトを実現

デンマークでは、電力消費における風力発電の割合を2020年には50%に増やそうと計画している
デンマークでは、電力消費における風力発電の割合を2020年には50%に増やそうと計画している

 現在、デンマークの再生可能エネルギーのエネルギー全体における割合は23.6%(2011年度)。電力消費量だけで考えれば4割を再生可能エネルギーでまかなっている。

 

 風力とバイオマスがそのほとんどを占めるが、変動する自然エネルギーを効率的に使うためのスマート技術や、熱利用、住宅の断熱強化など、ひとつの方策ではなくさまざまな方法をミックスして行っているのが特徴的だ。

 


 また、もうひとつ日本とは異なる特徴がある。大きな枠組は政府が決めるが、それをどう実現するかその方策については地域や企業、住民がそれぞれのやり方で進める方が良いという基本的な考え方だ。

 

 デンマーク気候・エネルギー・建造物省大臣のMartin Lidegaard氏はこう強調する。

 

「政府は包括的な枠組だけを決めて、自治体や市民がその方法を決める。ボトムアップで進めることも多い」

 

 大きな政策レベルの問題でも、基本的なビジョンを共有し、後は自治体の個性に任せるという。政策決定のプロセスだけでなく、その実現にも自治体や市民の意見やパワーが活かされることで、エネルギーシフトが進んできたのだろう。

 

 気候・エネルギー大臣に、震災後エネルギービジョンがいまだ明確に決まらない日本に対してのアドバイスを聞いてみた。

 

「10年間ですべてのエネルギー政策を変換することは難しい。でも次の20年を決めるのは今しかない。これからの数十年にかかわる新しい決定、正しい政策を今決定し、ステップを踏んで進むことが大事だ」

 

「デンマークの知見が震災後の日本に役立つのでは」と語るMartin大臣
「デンマークの知見が震災後の日本に役立つのでは」と語るMartin大臣

 70年代からの40年、そしてこれからの40年。エネルギーや気候変動など大きな変革期になる今、日本がどのような新しい1歩を進むか、重要な時期であることは間違いない。そして、エネルギーシフトを進めてきたデンマークの政策やその具体例で日本がヒントにすることはたくさんありそうだ。

 

取材・文/箕輪弥生

 

デンマーク気候・エネルギー・建造物省マーティン・リーダゴー大臣はビジネスの代表派遣団を率いて10月22日より25日まで訪日します。

 

◆デンマークの環境政策について

State of Green http://www.stateofgreen.com/

デンマーク大使館 http://japan.um.dk/ja/

PROFILE

箕輪弥生 (みのわやよい)

 

環境ライター・マーケティングプランナー、NPO法人そらべあ基金理事。新聞、雑誌、webなど幅広いメディアで、環境と暮らしをテーマにした情報発信や、環境に配慮した商品の企画・開発などにかかわる。著書に『エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123』『環境生活のススメ』(飛鳥新社)『LOHASで行こう!』(ソニー・マガジンズ)などがある。自身も自然エネルギーや雨水を活用したエコハウスに住む。

 

オフィシャルサイト:http://gogreen.petit.cc/

 

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コメント: 5
  • #1

    Yoko Lewis (火曜日, 23 10月 2012 12:48)

    何だか、胸のすくような記事です。国家の姿勢や考え方が、このようにすがすがしく、クリーンで力強く、理にかなっているという感動を初めて得た気がします。箕輪弥生さんの今後のレポートを、政治や行政に関わる人はもちろん、すべての日本の人が読んで、少しでも民意をアップし、ビジョンを掲げて、何が大事なのかをはっきりさせて行動していくことを願わずにはいられません。草の根の現場から、日本の自動販売機の多さや家庭でのリサイクル規定の高齢者には厳し過ぎる点や、今だ過剰な包装の無駄など…草の根の現場から見直す道もあるのでは?と思います。Think global, act local.
    容子ルイス

  • #2

    グリーントライボロジスト (月曜日, 30 9月 2013 19:26)

     三菱重工さんの冷凍機の磁気軸受の技術は温暖化防止に対する取り組みとして大変感銘しました。しかし、磁気軸受って耐荷重能が低いんだよね。巨大な風力発電なんかの重要なエネルギー変換源に使われるにはまだ難点がありそうだ。しかしそういった困難を解決しているのが、日立金属のSLD-MAGIC(S-MAGIC)という工具鋼だ。この材料は表面でオイルをトライボケミカル反応させて形成されたボールベアリング状のナノ結晶体で分子物理学的に摩擦係数を下げるという。これなら応用範囲が広そうだ。

  • #3

    国家運営全体最適 (木曜日, 28 11月 2013 18:31)

     なんかPV値が900MPam/minと画期的らしいですね。いずれにしても新素材開発の成功はでかい。アベノミクスによって中小企業の環境ビジネスが活況しているころだろう。

  • #4

    技術的視点の投資家 (土曜日, 28 12月 2013 08:58)

    日立金属(5486)さんってモーターなんかに応用される希土類磁石も作っていますよね。ハイブリッドやEV車での活躍も期待されていますよね。どうりで株価調子がいいわけだ。

  • #5

    ささやかでもさわやかに (水曜日, 15 1月 2014 19:46)

     投資家って自分の利益だけを追求して、社会に混乱を引き起こすものだと考えていたが、そうではないようですね。私も投資家になって明るい社会建設に微力でも役に立てようかな。

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