私たちに突きつけられている“上関原発建設計画”

2月21日午前4時44分に撮影された、作業強行の様子 (撮影:東条雅之)
2月21日午前4時44分に撮影された、作業強行の様子 (撮影:東条雅之)

 2月21日の未明から、山口県上関町に建設が予定されている上関原発(1号機、2号機建設)予定地で、建設を進めようとしている中国電力側と、原発建設反対派の間で対立が激化している。

 なぜ、未明からの作業になったかという点について、中国電力の広報は、EOLの電話取材に対して、「実際の作業は、夜明けに始まっています。船等の準備は夜中からだったかもしれませんが、その点は現場に任せているので……」ということだった。

 

 

 1982年に建設計画が持ち上がって以来、上関町は反対派と賛成派に二分され、30年が経とうとしている。

 中国電力は平成21年12月に、国に対して原子炉設置許可を申請したが、許可はまだ下りていない。現在、工事作業を行える根拠は、平成20年8月に、中国電力側が用地造成の目的で保安林解除申請書を山口県に提出したのを受けて、同県が、翌年4月に「魚つき保安林」1.3516haを解除しているなど、用地造成の許可を得ているからだ。ちなみに、“魚つき”というのは、“古来、漁業者の間には海岸近くの森林が魚を寄せるという伝承があり、海岸林などを守って来た歴史があることから、魚つき保安林という名で保護を受けてきた”(ウィキペディアより抜粋)ことに由来する。実際に、山口県が発行した「保安林内作業許可決定通知書(平成21年4月6日)」には、保安林指定の目的に「魚つき」と明記されている。

 

 原発反対の中心になっているのは、建設予定地である田ノ浦の沖、約4kmにある祝島の住民たち。島民の7割が65歳以上だが、“先祖代々受け継がれてきた大切な海を私たちの代で売ることはできない” と、体を張った反対運動を続けている。

 1996年には、祝島を除く四代・上関両漁協が、原発の建設同意と建設に係る漁業権の一部消滅同意(漁業補償交渉の妥結を停止条件とする)等を決議。中国電力は、2000年と2008年の2回に分けて、8漁協の共同漁業権管理委員会と、四代・上関漁協に対し、漁業補償金として125億5000万円を支払っている。なお、建設に反対している祝島の魚民は、補償金の受け取りを拒否した。

 

 中国電力が自社ホームページで説明する上関原発建設の理由は、次の3点だ。

 

・ エネルギ—の安定供給と経済性を維持しながらCO2排出を最大限削減するには,原子力開発の推進が極めて有効な切り札

 

・ 中国地方の電力需要は,中長期的に緩やかながら着実に増加するものと想定

 

・ 中国電力の原子力発電設備の割合は全国の値に比べ半分以下(8%程度)。これを2022年までに30%に増やすこと目標とする

 

 発電時にCO2を出さず、低コスト(5.3円/kWh)とされる原子力発電だが、ウラン採掘から放射性廃棄物処理、使用済核燃料の再処理、さらに原子炉自体が廃炉となるまでの、すべてのライフサイクルアセスメント、またその費用対効果についても、もっと議論されるべきだろう。

 

 先日、国交省が、「日本の人口は、2050年には25%減となる」という長期展望を発表したが、中国電力は将来、少子化や省エネ化が進むことにより電力需要が減るとは考えていない。

 2009年度(2010年3月26日)にリリースされた「平成22年度 経営計画の概要について」の中で、「省エネや少子化などの影響はあるものの、情報化および高齢化社会の進展、快適性志向の高まりや電化住宅の普及拡大などにより、販売電力量と最大需要電力は、着実に増加すると見込んでいる」として、平成31年度までの販売電力量と最大需要電力を算出している。

 

 つまり、中国電力が、将来の原子力発電の割合を30%まで引き上げるために、是が非でも建設しようとしている上関原発は、私たちの日々の暮らしの便利さ、快適さを元に試算されて進められている。

 もちろん、これは上関町、山口県だけの問題ではない。現在すでに国内に54基の原発があるが、昨年3月に発表された「2030年エネルギー基本計画原案」(経済産業省)では、さらに14基の原発新設を盛り込んでいる。

 原発計画と、毎日膨大に排出される放射性廃棄物の最終処分地(地下埋葬)の問題が、今後も日本のあちこちで持ち上がるだろう。

 

 原子力発電所は、40〜60年ほどで寿命になるが、その廃炉技術が確立されていないことも忘れてはいけない。2003年に運転を停止した元・新型転換炉「ふげん」(福井県敦賀市)は、国から廃炉の認可を受けてから今年2月で3年になるが、全体の0.1%しか解体できていない。しかも、36万トン余りに及ぶ廃棄物の処分方法や、放射線量が高い部位の解体技術は、“開発中”なのだ。

 このことから、原発が建った場所は、廃炉になった後も二度と元の汚染されていない更地には戻らないと言っていい。

 

同日、中国電力側作業員と反対住民らがもみ合いに (撮影:東条雅之)
同日、中国電力側作業員と反対住民らがもみ合いに (撮影:東条雅之)

 こうしたリスクがあったとしても、30年前に計画された原発建設が強行されようとするのはなぜだろうか。

“電気を使っていますよね。便利さを求めていますよね。だから、原子力発電が必要です”というような論理に縛られる限り、今後も原子力発電による電力供給は増える一方だ。

 再生可能エネルギーの技術が日進月歩のなか、日本は、本当に原子力発電の道しかないのかを考える岐路に立っている。そのときに、原発建設によって、どのように利益が生まれ、どこにもたらされているのかを明らかにしていくことも重要だ。もし、利益配分がどこかに集中しているのであれば、“電力の自由化”、“発電方法の選択”を求めていくことが必要なのではないか。

 

 上関町・祝島で、反対派の住民とその支援者たちが、中国電力を相手に声を枯らし、体を張って抵抗していることは、日本に暮らす私たち全員に突きつけられた、後回しにできない大問題なのである。

 

文:温野まき

 

中国電力

http://www.energia.co.jp/

毎日jp地域ニュース「記者リポート:ふげん解体 めど立たぬ廃棄物処理/福井

http://mainichi.jp/area/fukui/news/20110212ddlk18040283000c.html

 

 

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コメント: 1
  • #1

    さざなみ (水曜日, 02 3月 2011 01:54)

    この反対運動には、かつての成田闘争のような気持ち悪さを感じます。

    『環境保護』などと言うキレイ事を並べながら、暴力を『体を張った反対運動』などと正当化する者に、環境保護を語る資格はありません。

    テロリズムのような反対運動は、直ちに止めるべきです。

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