東北を復興する国産材仮設・恒久住宅の動き ~仮設住宅に、中越地震の教訓は生かされるか~ 

急務として進められる仮設住宅だが…

 東日本大震災から、2ヵ月が経った。家を失い避難所での生活を余儀なくされている被災者が一刻でも早く日常の生活を取り戻せるよう、仮設住宅の建設が急がれている。

 国道交通省の発表によると、計6万8,315戸の仮設住宅建設要請の内訳は、岩手県(14,000戸)、福島県(24,000戸)、宮城県(30,000戸)、その他4県(315戸)。このうち5月10日付けで着工済み(完成を含む)は31,406戸だ。

 

 仮設住宅の建設予算は、災害救助法(1947年に制定)に基づいて、厚生労働省が管轄している。告示で定められた仮設住宅建設費の一般基準は、同省の予算である災害救助費負担金からの補助により1戸当たり238万7000円(29.7平方メートル/3人居住用)が上限だが、厚生労働省災害救助救援室によると、今回は、寒冷地仕様の断熱施工などを伴うことや、短期間に大量の建設を行うため、需要と供給のバランスから資材が高くなることも見越して、1戸辺り400万円~500万円程度を想定しているという。

 

 まず、各市町村から県へ必要戸数の要望が吸い上げられ、県が、社団法人日本プレハブ建築協会(*以降、プレ協)へ建設を要請することになっている。同協会を構成するのは大手プレハブメーカーで、災害時に、迅速に仮設住宅建設に対応するために、全国都道府県との間で〈災害時における応急仮設住宅の建設に関する協定〉を締結している。今回、プレ協に要請された仮設住宅供給数は30,000戸。残りは、各県が公募で業者を選定して進めている。 

[写真1]むき出しの鉄骨は熱橋(ヒートブリッジ)となり、冬場は室内を結露させる
[写真1]むき出しの鉄骨は熱橋(ヒートブリッジ)となり、冬場は室内を結露させる

 プレ協の仮設住宅では、組み立て式やユニット式の軽量鉄骨プレハブ工法が主流となっているのだが、実は、こうしたプレハブ仮設住宅には、東北のような寒冷地特有の問題が起きるという指摘がある。

 

 中越地震(2004年)のときに建てられた仮設住宅に、寒冷地における問題点を見ることができる。長岡技術科学大学工学部の木村悟隆准教授は、『仮設住宅の居住性』という詳細な報告書を作成している。

 

寒冷地の仮設住宅で起きた深刻な結露

[写真2]組み立て型プレハブの壁。断熱パネルの接続部分が激しく結露している
[写真2]組み立て型プレハブの壁。断熱パネルの接続部分が激しく結露している

 この報告書で指摘されている大きな問題点が、夏の暑さと、冬の“結露”だ。軽量鉄骨工法のプレハブ仮設住宅では、鉄骨の一面は外に、反対の面は室内に露出するので、鉄骨が熱橋(ヒートブリッジ)となる。そのため夏は外気を伝えて高温になり、冬は暖房で温まった室内が結露[写真1]する。壁には、寒冷地仕様として断熱パネルが使用されるが、つなぎ目部分の断熱効果がほとんどないために、ここが熱橋になり、冬場はしたたり落ちるほどの結露が生じた[写真2]。壁側に物が置けないうえに、カビが大発生し、健康被害が心配される状態だったという。

 

[写真3]中越沖地震の仮設住宅で、プラスチックカバーされた鉄柱。結露はほとんど解消された。〔以上3点、『仮設住宅の居住性』報告書(2008年/長岡技術科学大学 木村悟隆准教授)より〕
[写真3]中越沖地震の仮設住宅で、プラスチックカバーされた鉄柱。結露はほとんど解消された。〔以上3点、『仮設住宅の居住性』報告書(2008年/長岡技術科学大学 木村悟隆准教授)より〕
福島県新地町の軽量鉄骨プレハブ仮設住宅。積雪量は新潟ほどではないが、海風が強い東北沿岸部では、結露対策のほかに、玄関に風除室を設置するなどの防風対策も必要。(2011年4月30日撮影/長岡技術科学大学 木村悟隆准教授より提供)
福島県新地町の軽量鉄骨プレハブ仮設住宅。積雪量は新潟ほどではないが、海風が強い東北沿岸部では、結露対策のほかに、玄関に風除室を設置するなどの防風対策も必要。(2011年4月30日撮影/長岡技術科学大学 木村悟隆准教授より提供)

「中越地震の仮設住宅では、天井裏の結露が原因で滴り水があり、漏電になりかねないような事例もありました。中越沖地震(2007年)のときには前回の教訓を踏まえて、鉄柱にプラスチックカバーを被せることで結露は緩和されました[写真3]。ただ、今回の震災の報道で紹介されている軽量鉄骨構造のプレハブ仮設住宅を見る限り、中越地震の教訓は生かされているとは言えません」(木村准教授)

 

好評だった地元メーカーによる木質住宅

結露が発生せず、好評だったウエキハウス(株)の木質住宅(写真は中越沖地震建設された仮設住宅)。外観は木質パネルに角波鉄板を張っている。現在は、木質パネルと鉄板を一体化したパネルも開発し、施工期間はさらに短くなった
結露が発生せず、好評だったウエキハウス(株)の木質住宅(写真は中越沖地震建設された仮設住宅)。外観は木質パネルに角波鉄板を張っている。現在は、木質パネルと鉄板を一体化したパネルも開発し、施工期間はさらに短くなった

 問題の多かった中越地震の仮設住宅のなかでも、結露が発生しなかった住宅があったことに注目したい。唯一地元の住宅メーカーとして採用された柏崎市のウエキハウス株式会社が建てた木質住宅だった。

 

「柱は木でできており、内装も木や石膏ボードが使われていて結露しませんでした。断熱性に優れていて、居住者の中には、地震前に住んでいた住宅よりも温かかったと言う居住者がいたくらいです」(木村准教授)

 

 ウエキハウスは、高断熱・高機密の木質パネル工法を得意としている。中越地震の仮設住宅のノウハウは、東日本の震災でも十分生かすことができるだろう。

 

「1995年の阪神淡路大震災のときに、仮設住宅の建築部材が足りなくなり、うちが100棟分の木質パネルを供給した経緯があったんです。それが評判良かったことから、中越地震のときに県会議員の推薦もあって仮設住宅に参入できました。今回の震災では、特に、高齢者や病人など弱者にとって住み心地のいい仮設住宅を提案したいのですが、1ヵ月で300棟建てる準備ができているのに、なかなか参入させてもらえない。木材乾燥機もあるので、地域の林業や工務店と組んで国産材を活用し、雇用を生み出したいという構想もあるのですが…」(ウエキハウス植木忠史代表取締役)

 

地元の木材による仮設・恒久住宅が注目されている

岩手県住田町で建てられた地元の気仙杉を使った、木のぬくもりが感じられる仮設住宅。トイレ・風呂付き2DK(29.8平方メートル)
岩手県住田町で建てられた地元の気仙杉を使った、木のぬくもりが感じられる仮設住宅。トイレ・風呂付き2DK(29.8平方メートル)

 木質の仮設住宅を切望する声は高まりつつある。岩手県では地元の木材を使った仮設住宅建設が話題だ。岩手県気仙郡にある住田町は、元々「森林・林業日本一のまちづくり」を掲げており、今回の震災の前から、仮設住宅の構想があったという。予算額2億5,000万円で、町有地に一般仮設住宅93棟と医療関係者向け17棟の計110棟を地元の気仙杉を使って建設する。募集に対して6倍の応募があり、すでに、30戸が入居済み。5月末までには残り63棟を完成させて入居者を受け入れる予定だ。県による仮設住宅としての借り上げを断り、NPO法人more treesによる〈LIFE311プロジェクト〉やFSCジャパンなどの支援を受けながら、民間の力で継続的事業につなげていく道を選んでいる。

 

写真提供:more trees
写真提供:more trees

「住田町の木造仮設住宅は、木の香りと温もり、結露がほとんど無いこと、一戸建てなのでプライバシーが尊重されるという良さを理解いただけたのか、応募が殺到しました。一過性の仮設住宅ではなく、解体すれば再利用も可能です。気仙杉の良さを知ってもらい、国産材を普及させ、中山間地域が林業と周辺産業に活路を見出していくための起爆剤にしたいと思っています」(住田町建設課:佐々木邦夫課長)

 

 NPO法人天然住宅バンクでは、『仮設じゃない「復興住宅」』というコンセプトで出資金を募り、地域木材を活用した伝統工法による復興住宅プロジェクトを展開している。恒久住宅に改築することができ、分解して他の土地に移住も可能だ。こちらも、必要な材料と人を地域のなかで集めることで雇用を生み出そうとしている。

 

 仮設住宅ではないが、宮城県石巻市では被災者に向けて、地元の木材を使い、地元の職人が施工する恒久住宅の建設が始まっている。伝統工法を採用しつつ、断熱材と二重サッシで寒冷地に対応する住宅だ。建設費用などを民間企業が支援し、津波を免れた高台の平地を低価格で借りて、7月までに10棟が建設される。入居者は大学と定期借家契約を結び、賃料(2階建て住宅の場合17,000円)を支払う。大学は家賃収入を石巻市に寄付し、将来は自治体による運営を目指している。このプロジェクトの中心となっているのは、工学院大学で日本建築史や歴史的建物の研究を行っている後藤治教授等だ。

 

「普段から私たちは文化財の調査で全国をまわっていて、地域の歴史的街並継承の活動などを行っていますので、地元の木材を使うというのは常識なのです。石巻市の建設地では、過去に大学の研究室として合宿を行ったご縁もあって、今回のプロジェクトが生まれました」(後藤治教授)

 

 また、仮設住宅ではなく恒久住宅を建てる理由についてこう話す。

 

「国は、震災があると仮設住宅建設を前提に予算を組むので、自治体はそれに縛られてしまいますが、平地が少ない三陸沿岸のようなところでは、最初から恒久住宅を建てるほうが有効な場合も多い。本来は、市町村がこうした市営住宅を素早く建てることができればいいのですが、いまは、どの自治体も、“り災証明書”発行や仮設住宅入居者の対応など、国から言われている業務で手一杯になっています。なので、今回の石巻市のプロジェクトの場合は、民間の資金援助を得て、大学が建設することになりました。私たちは、地域の元気な工務店が住宅を建てて、いずれは公共住宅にして自治体が貸すといった“民設公営”を復興のキーワードにしたい。そのためには、8月のお盆までに、何が何でも仮設住宅を建設するのではなく、いまからでも恒久住宅に予算を振り分けることが必要です」

 

 伝統工法は、入居しながら建てることができるので、7月末までに被災者に入居してもらい、大学の学生や居住者と一緒に仕上げていくことも考えているという。

 

中越の教訓を復興のビジョンにつなげたい

 いまでこそ、地元の木で、地元の職人が住宅を建てるのは珍しくなってしまったが、以前は、全国どの地域でも当たり前のことだった。

 

「第二次世界大戦中(1945年1月)に愛知県で起きた三河地震では、村が近隣の山を買って、地元の大工さんたちが仮設住宅を建てました。工業化されるなかで、いまのように県外から供給される軽量鉄骨のプレハブになったわけですが、各地域が地域の木を使って2,000〜3,000戸建てられれば、ある程度の規模の災害なら、地元で仮設住宅が供給できるようになるはずです。木造だからこそ、改築や増築で恒久住宅にも転用できるし、木は最後には燃料になります。そうすれば、被災直後から地域経済が回っていくのではないでしょうか」(長岡技術科学大学工学部 木村悟隆准教授)

 

 もちろん軽量鉄骨プレハブ住宅であっても、結露対策を行っているメーカーもあり、解体後は再利用もされている。ただ、今回のようにストックを大幅に超えて生産供給されると、解体された部材の保管管理に相当な費用がかかり、いずれは廃棄物になってしまう。そういう意味でも、日本の風土に合った木質の仮設住宅や恒久住宅に着目し、地域の木材利用を促したい。

 東北は杉の産地でもある。仮設住宅や恒久住宅に間伐材が利用できれば、森と林業の再生につながるかもしれない。

 

 被災者を避難所生活から解放することは最優先課題だが、住環境には、最低限でも、寒冷地で起きた震災、中越地震の教訓が生かされて欲しい。既存の仮設住宅入居ありきではない、被災地の資源と人材を生かす、柔軟な政策と支援が必要とされているのではないだろうか。

 

参考:地震災害居住支援タスクフォース

http://tf.qee.jp/

PROFILE

温野 まき(おんの まき)

 

神奈川県在住。おひさまスタイル編集長。フリーライター、編集者として、インターネット、雑誌、書籍などでしごと中。インタビューを得意とし、学校での森林教育コーディネートも行う。循環型農業、森林再生、自給自足、地域の自立が主なテーマ。風水研究家でもある。合同会社hanulu代表。

 

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コメント: 3
  • #1

    寺西 (火曜日, 24 5月 2011 13:45)

    神戸の時より、問題になっている、仮設住宅の結露・夏の猛暑は低断熱性に起因
    するもので、そのほとんどが未解決ある。その解決の一案が、外断熱工法の採用
    であるがいまからでは遅そすぎる。そこで今からでも間に合うのが、結露・夏の
    猛暑の最大の要因である屋根材を現状の折板+ペフ+グラスウールをイソダッハ
    (日鉄住金鋼板製)の様な、鋼板+ポリウレタンフォーム+鋼板の複合屋根材への変更を提案致します。コスト(平米5~6百円程度のアップ)・供給面でも問題ないと思います。長期使用を考えると検討に値すると思えます。

  • #2

    職人 (水曜日, 29 6月 2011 00:19)

    仮設住宅の工事には、いろんな問題も起こっているらしいです。
    http://hnds.jp/1277

  • #3

    高橋 葉子 (火曜日, 27 9月 2011 13:20)

    温野まき様
    お久しぶりです。クニナカの高橋です。9月21日から、24日まで石巻と女川に行ってきました。木工作家の人を訪ね、そして現在の仮設住宅の一部をみてきました。仮設では無く復興住宅を杉材でという、観点でくりこまの方にも行きたかったのですが、今回は見合わせました。まきさんの記事にであい、もっと詳しく知りたく思っています。現状の住宅事情の動きなど教えて下さい。
    被災地に行って、復興はまだまだなのに、神戸の時の繰り返しになりそうで、どうにかしたい思いです

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