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「東洋のガラパゴス」小笠原諸島  Photo by phaphapha
「東洋のガラパゴス」小笠原諸島  Photo by phaphapha

 5月7日、文化庁は岩手県平泉にある文化財群と東京都小笠原諸島に関して、世界遺産委員会の諮問機関(文化財はICOMOS:国際記念物遺跡会議、自然遺産はIUCN:国際自然保護連合)から世界遺産一覧表への記載が適当であるとの勧告を受けたことを明らかにした。

 

 世界遺産は、各締約国が「世界遺産暫定一覧表」の中から推薦し、IUCNなどの諮問機関による審査・勧告を経た後に世界遺産委員会によって記載の可否が正式に決定される。今年は6月19日~29日にパリで開催される第35回世界遺産委員会で正式な登録が決まる。

 

 小笠原諸島はその誕生以来、一度も大陸と連結せず独自の生態系が進化してきた場所で、ヘラナレンやオオハマギキョウなどの植物やハハジマメグロ、アカガシラカラスバトなどの鳥類、オガサワラオオコウモリなど多くの固有種が生息し、その独自性・多様性などから「東洋のガラパゴス」とも言われている。これらの動植物は、海流や風に乗って運ばれたり、漂着物に付着して島に流れ着くなど様々な経路で小笠原諸島へたどり着き、その環境に適応しながら今日まで脈々とその種を維持してきた。

 

 一方の平泉は、古代より水運や軍事の重要地として数々の歴史的事象の舞台となってきた地。特に藤原清衡以来、基衡、秀衡、泰衡のいわゆる奥州藤原氏4代の時代にはその根拠地として政治・経済・文化などの面で隆盛を極め、その栄華は中尊寺金色堂などの文化財群によって今に伝えられている。岩手県は今回の東日本大震災で甚大な被害を受けた地域であり、世界文化遺産への登録が復興への兆しになればと、地元の期待は大きい。

 

 奥州藤原氏の息吹が連綿と息づく平泉と独自の生態系が保たれている小笠原諸島。これら二つの世界遺産候補は、文化・生命の歴史とそれらを維持していくことの大切さを私達に語りかけている。

 

文:田中一整

 

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