どうする?これからの日本のエネルギー 原発のない社会は可能か?

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足利工業大学学長の牛山 泉さんにお話をうかがいました。

取材・文:野村幸男(渡良瀬通信編集長)

*「渡良瀬通信」6月号で掲載されたインタビューを抜粋してお届けします。

牛山泉(うしやま いずみ)

1942年生まれ。上智大学大学院理工学研究科博士課程修了。工学博士。エネルギー変換工学を専門とし、主に風力発電など再生可能エネルギーの研究に従事。NEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構の洋上風力発電委員長、NEF新エネルギー財団の風力委員長、グリーン電力認証委員長、JICA専門委員などを務める。 日本太陽エネルギー学会元会長、日本風力エネルギー協会元会長、日本機会学会フェロー。エネルギー・風力関連著書20冊以上。これらの貢献により文部科学大臣賞受賞。2008年より足利工業大学学長となる。

 

エネルギー問題は、日本国民決断の時です

-自然エネルギーにおいては日本のトップの研究機関がある足利工業大学の学長、しかもご自身が我が国の風力発電における第一人者ということもあり、いろいろなマスコミに引っ張りだこ。お忙しそうですね。

 

牛山 少し、ね。でも誤解されては困るんですが、私はもともと反原発ではなくて、原発より安心・安全なものがあるなら原発は使わなくてもいい。つまり【脱原発】をすすめたいーと言いたいのです。 

 半年くらい前に、「原発のない社会は可能か?」という講演を依頼されまして、マスコミの方も大勢聞きにこられました。もちろんその時にも話しましたが、日本の自然エネルギーのポテンシャル(潜在力)は原発なしで十分やっていけるものがあります。しかし、政治的・産業的に可能か、というと、これが微妙な問題になってきます。ですから今は、日本国民がどんなエネルギーを選ぶかという決断をすべき時なんだと思うんです。

 

-自然エネルギーというと日本ではどんなものがありますか?


牛山 まずは太陽光発電ですね。これは太陽さえ出ればどこでも使えます。それから水力。大きなダムを造らなくても、コミュニティ発電なら小さな水力利用で十分可能です。それと風力発電。最近では直径100mを超えるような風車もあるんです。

 ほかにも潮流(海流)を使った発電方法や地熱、バイオマスもありますし、森林だって昔は薪や炭を供給する立派なエネルギー源でした。

 

世界が認める日本の風力発電技術

-牛山先生の専門の風力発電がここにきて俄然注目を浴びるようになってきました

牛山 世界の先進国に比べればまだまだですが、日本でもたくさん風力発電を手がけているところがあります。たとえば茨城県の神栖市の海岸には富士重工業の宇都宮工場で造った直径80m、2000kWの風車が7基あります。これが地震にも津波にも耐えて回り続けています。今日本全体で1700基くらいの風車が建っていますが、今回の災害ではほとんど被害を受けていません。そういうことで危険分散という意味でも、全国に散らばっている風車(風力発電)は非常にいいと思います。


-風車はどちらかというと海岸線付近に設置されるケースが多いようですね。


牛山 内陸ですと風があまり吹かないんですね。場所によっては発電出来なくはないですが、だからといって無理はしない方がいいと思います。最近は海岸線だけでなく海の中に風車を建てる「洋上風力発電」も始まりました。実は私は洋上風力発電に関する「NEDOの着底式洋上風力発電」(NEDO:新エネルギー産業技術総合開発機構)の委員長を務めておりまして、これを是非やろうと言っています。

 ヨーロッパでは洋上風力発電が多いんです。特に北海は遠浅なものですから、「着底式」といって、海の底から直接建ててしまう方式が可能なんですね。しかし日本は遠浅なところは少ない。そこで、海の中に風車を浮かべてしまう「浮体式」というのを考えました。日本は洋上風力発電のハードウェアを造る技術はすごくあるんです。


-世界は(技術力のある)日本はどう見てるんですか?


牛山 世界で洋上風力発電を一番多く取り入れているのはイギリスですが、今やっている風車よりもっと大きい、直径が120~130mくらい、出力が5000kWという超大型の風車を、三菱重工にたのんでいます。日本国内での普及はまだまだなのに、外国は日本の風力発電の技術に目をつけているわけでして、これは日本の産業としても有望だろうと思っています。また市場の大きさでいうと年間5兆円、世界では約50万人が風力発電関連で働いているんです。しかも年率で25~30%ずつ伸びていますので、日本もそれに乗り遅れないようにしなくちゃならない。とにかく日本にある自然エネルギーを本格的に開発すれば、現在の原子力発電に替わるくらいのポテンシャルは十分にあるんですから。

 

脱原発には、国のトップの決断が!

-外国の(自然エネルギーへの)取り組みは?


牛山 たとえば国の大きさ、工業レベルや経済面で同程度のドイツの場合、風力発電は日本の20倍くらい、太陽光発電も日本の何倍かになります。なぜこうなったかというと、シュレーダー前首相の時に「みどりの党」と連立を組んで、2020年までに原子力発電を段階的に止めてゆきましょう、という政策を打ち出したんですね。しかし原発を止めるということはそれに替わるエネルギーを導入しなければなりません。ドイツは石炭の産出も多いのですが、火力にすると二酸化炭素(CO2)が発生しますので、これは受け入れられない。そこで原発・火力に替わる一番パワフルなものとして風力が見直されたのです。それから太陽光も取り入れ、さらに酪農も盛んなので畜産廃棄物のメタン発酵を使ったバイオマス発電もやりましょうということになりました。

 しかしドイツも東西ドイツの統一後、財政的には厳しい状態でしたので、補助金を出すのではなく、それらをうまく取り込める仕組みを作りました。それがFIT(固定価格買取制度)といって、電力を自由化にして自然エネルギーは少し高い価格で買い取りましょう、長期にわたって保証しましょう、ということにしたのです。これにより民間の投資が盛んになりました。国のお金を使わなくても、仕組みを作っただけで「脱原発」が実現していったのです。


-日本の場合なら「補助金を」ということになるんでしょうね。


牛山 それではダメなんです。それよりも少し価格を高くして、つくった電力を電力会社が買い取るようにする。電気を使用する方は使用料が10%くらい高くなる可能性がありますが、国民が「それでもやりましょう」という気になれば可能です。今後、持続可能社会を築いていくことを考えれば、少しコストがかかるというのは当たり前だと思うんです。そうするためには、国のトップがリーダーシップをとって、いつまでも危ない原発に頼らずに、自然エネルギーを中心にエネルギーを転換する決断が必要だと思います。


-今のままの社会が続くと今回のようなことが起こるのではという不安がありました。


牛山 誰でもわかることですが、今まであれほど「安全だ、安全だ」と言ってきたのだから、需要地のそばになぜ原発を造らなかったのか?福島にしても新潟にしても、あそこから東京に送電することによって15%くらいのロスをしてしまうんです。もしホントに100%安全だと言うなら、東京湾に強力な原発を造れば、送電ロスもなくなる。結局、危ないから、東京から遠いところへ持っていくんです。

 

ホントのコストは原子力が一番高い

-どうして日本は自然エネルギーの技術が世界のトップクラスなのに伸びないのか不思議なんですが・・・。

 

牛山 風力発電の発電設備設置容量は10年くらい前は世界で7番目くらい、それが今では13番目です。日本は電力会社がなるべく自然エネルギーの電気を買い取りたくなかったということなんです。理由は「原子力の方が安定しているから」というものですが、おかしいと思うんです。原子力だってウラン燃料がいつまでもあるわけではないし、安いと言われているコストも決して安くはない。

 アメリカの原子力のコストは、廃棄物、廃炉後の処理のコスト、今回のような事故の補償なども入れるんです。そうすると原子力が一番高くなるんです。日本はそれを入れない。稼働する部分だけの計算なんですね。その上、電源三法交付金(*)の交付額の約7割が原子力発電に使われているわけです。 

 イギリスの例ですが、イギリスが電力の自由化をした時に、それまで国が持っていた発電所を民間が買い上げたんですが、原子力発電に買い手がつきませんでした。なぜなら運転コスト、廃棄物処理コスト、廃炉処理コストなどを計算していくと天文学的な数字になってしまうんですね。だから民間はもう手をつけない。

 そういうものでありながら、日本は国策で原発を進め、ヨーロッパでやっているような自然エネルギーの買い取り制度をやらなかったんですね。自然エネルギーは発電量が不安定だからといいますが、スペインなんかは風力と火力をそれぞれ調整・融通しながらやってます。たとえば今日は風が強いから火力を落とすといった具合に。

 

原発のリスクと自然エネルギーのリスクは比ではない。

-風力発電のリスクを言う人もいますが・・・。


牛山 風力発電で問題になっているものに振動騒音と景観があります。騒音のなかでも特に低周波音のことが問題視されています。これは耳では聞こえないけれどカラダにひびくというものです。しかし風車が一番たくさん建っている北海道、青森、秋田では全然問題になっていません。なぜなら、十分に人家から距離をとっているからです。低周波音の問題は、民家からの距離を考えて立地すれば何の問題もありません。

 次に景観問題ですが、これは個人的な趣味、主観の違いがなくはないと思います。景観については、各自治体ごとに検討していけば良いことでしょう。たとえば北海道の稚内などは町から海の方を見ると利尻富士が見えるんですが、風車のうしろに利尻富士が見える位置には風車を建ててはいけないという条例をつくりました。

 いずれにしても騒音や景観を問題は、洋上風力発電にすればほとんど問題がなくなります。 それともうひとつ、野鳥が風車の羽根に衝突するという「バードストライク」の問題があります。これに関しては、野鳥の会のメンバーに加わっていただき、渡り鳥のルートや時期を確認して、そこを避けるようなことはできると思うんです。すでにアメリカなどはこの方式でやっていますから。

 とにかく原発と自然エネルギーの本質的な違いは、放射能を出すか、出さないかです。放射性廃棄物にいたってはこれはもう次元の違うものと言ってもいいでしょう。それを排出しつづけるということは大変なことです。風力の場合は、寿命がきたら土地を更地にするだけでいいんです。土が汚染されるということもありません。子孫のためにも、もう原発は造るべきものじゃないんですね。

 

政治の世界の「原発村」

-ところで、今回の事故以後、エネルギーに対する政策は変わってきていますか?


牛山 私は今回の事故で、「原発に替わるエネルギーを私たちは選びたい」という政党が出てきてもいいと思っていたんですが、この前の統一地方選を見ると、残念ながらそういう政党は出てこない。そういう構造になっていないようですね。

 実は今の原発推進の路線は自民党政権の時に決まったことで、それが民主党になって少し変わるかなと思っていたんですが、長期的にはむしろ原発を増やす方向になってしまったんで、「これは違うんじゃないか」と思っていました。


-政治家って「原発」についてどう考えているんでしょうね。

 

牛山 政府の首脳と話し合う機会があったのですが、彼らは二酸化炭素を出さない、出さないという言い方をするんです。これは間違っていると思うんです。たしかに運転(発電)している時には出さないんですが、外国で作ったペレット(ウラン燃料)を日本へ運んできます。それを使い終わったら長期にわたって冷却し、カプセルに詰めて地中に保管します。これらのことが二酸化炭素を全く出さないということはありえません。どうも政治の世界には原発利権に結びついた「原発村」というのがあるのかもしれない、と思いたくもなります。

 

世界は50年先のエネルギーを考えている

-ところで牛山先生は昨年、とてもめずらしい賞をいただいたそうですね。


牛山 実は中東・アラブ首長国連邦のアブダビで「世界再生可能エネルギー会議」というのが開かれたんです。これはイギリスでスタートして隔年で開催され、昨年がちょうど20周年でした。4日間の国際会議でしたが、その最終日に日本人で初めて功労賞をいただきました。20年間、この会議に貢献してきたことが認められたようです。


-アラブというとたしか世界でも有数な産油地域ですよね。


牛山 そうです。その会議にアブダビのトップが出てきてあいさつしました。「ごらんのように我が国は石油によって今は繁栄をしています。でも私たちは50年先を見ています。50年先はもう石油はないかもしれない。だから私たちはアブダビの隣にマスダールシティという、自然エネルギーだけでエネルギーを供給する実験都市をつくっています」とね。

 私の大学にはサウジアラビアからの留学生がいます。彼らは国からこちらに送り込まれているのです。なぜならサウジも、石油がなくなったあとのことを考えているからです。大使館の書記官が、自然エネルギーの研究ではどの大学が適しているかということで、ピンポイントで足利工大を選んできたわけです。 このように産油国は皆、石油枯渇後のことを考え、自然エネルギーにシフトしようとしています。 もちろん産油国だけではありません。去年東京でデンマーク大使に講演をお願いしたのですが、講演のタイトルが「2050年、デンマークは化石燃料は使っていません」というものでした。どのようにしてそれを実現するかというと、60%を洋上風力発電にするんだそうです。 化石燃料なしでやっていけるという国のモデルを今から考えているんですね。

-それを聞くとやっぱり日本は心配ですね。


牛山 いつまでも原発、原発はないでしょうね。産油国ですら50年後を考えた国づくりをしているわけですから。

 足利工業大学は今年、期せずして「自然エネルギー・環境学系」というのを立ち上げ、その特徴をより鮮明に出していこうとしていました。そのスタートの年に東日本大震災が起きたものですから、これはもう使命感をもってやっていかなきゃ、と思っています。

 

■足利工業大学

  我が国のエネルギー教育の拠点校に選ばれ、大学構内には環境エネルギー教育のテーマパークである「風と光の広場」と、自然エネルギー・ミニ博物館も設置されていて、JICA国際協力機構、NEF新エネルギー財団などの見学コースに指定されている。

 

*電源三法交付金とは
 原子力発電所などの発電所建設を進めるために、電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法に基づいて、電気料金に上乗せされている電源開発促進税をもとに国が発電所周辺の自治体に支払う給付金。いわゆる迷惑料と言われている。

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コメント: 21
  • #1

    菅原英剛 (水曜日, 15 6月 2011 10:35)

    大変参考になりました。私も自然エネルギーの普及に携わっていますが
    いまより多くの人に発信してこの地球を美しいまま子孫に残したいと思います。牛山先生の益々のご活躍をご祈念いたします。

  • #2

    野田顕彦 (日曜日, 26 6月 2011 14:56)

     環境問題に造詣深い先輩に教えてもらって読みましたが「補助金でなくFIT方式で」や「廃炉や賠償のコストも算入すれば、原発が一番コスト高」など、大変勉強になりました。

  • #3

    上庄田太郎 (水曜日, 23 11月 2011 22:23)

    とっても参考になりました 本当にありがとうございます

  • #4

    a (火曜日, 18 9月 2012 15:12)

    勉強になりました

  • #5

    石澤育子 (月曜日, 10 12月 2012 09:10)

    漠然とした自然エネルギー再利用方法がやや鮮明に実現に向け前進致しました。
    2012年12月9日の弘前西教会での親子共演?で深く感銘致しました。
    有り難うございます。

  • #6

    寿亜ちゃん (土曜日, 24 8月 2013 14:44)

    ありがとうございました。またみさせてもらいます。

  • #7

    円福寺亮摩 (月曜日, 11 11月 2013 21:16)

    再生可能エネルギーによって日本は変わるんですね

  • #8

    高三 (水曜日, 03 12月 2014 08:40)

    素晴らしい、参考になりました。

  • #9

    由良守生 (日曜日, 19 4月 2015 10:32)

    風力発電の建設地域では、たくさんの人が低周波音で苦しんでいます。目まい、頭痛、耳鳴り、首の痛み、不眠、体のしんどさ、さまざまな症状に襲われます。そして生活の質の低下、生活の崩壊、転居などに至ります。
    被害の深刻さに対して、真摯に向き合うべきではないでしょうか。
    被害者は少数だから。因果関連が証明されないから。地域活性化になるから。などという全体主義になってはいけないでしょう。それは民主主義ではありません。
    風力発電により苦しんでいる人々がいます。どうか被害の実態に気がついてください。

  • #10

    モアイ (金曜日, 09 12月 2016 14:29)

    すごすぎ

  • #11

    よもだんご (金曜日, 09 12月 2016 14:31)

    生クリーム食べたい

  • #12

    こめ (金曜日, 09 12月 2016 14:37)

    おれの家風車100個ある

  • #13

    めがね (金曜日, 09 12月 2016 14:40)

    おらさいきょう

  • #14

    砂糖 (金曜日, 09 12月 2016 14:41)

    眼鏡黙れ

  • #15

    (金曜日, 09 12月 2016 14:46)

    よよよよよよよよyyyyっよっよおよよよよよよよ

  • #16

    (金曜日, 09 12月 2016 14:48)

    だまれ

  • #17

    (金曜日, 09 12月 2016 14:49)

    落ち着いて

  • #18

    まっふー (金曜日, 09 12月 2016 14:50)

    焼き芋うまい

  • #19

    そうよも (金曜日, 09 12月 2016 14:51)

    やめろ

  • #20

    堀口 (金曜日, 09 12月 2016 18:44)

    なに?

  • #21

    (土曜日, 10 12月 2016 12:42)

    カッスやな↑↑

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