デンマーク南部、人口約7万人の島・ロラン島。600基以上の風車が回るこの島は、「自然エネルギー100%の島」として、いま世界中から注目を集めている。
デンマークでは、1973年のオイルショックをきっかけに、原子力発電所の建設が計画され、ロラン島も建設候補地の1つだった。それに「待った」をかけたのが市民たち。3年間、十分に考える時間がほしいと政府に要望し、全国で原発についての勉強会が行われるようになった。その結果、市民が望んだのは原発のない社会。1985年、政府は原発建設計画の廃止を決定した。
では原発をやめて、どうやってエネルギーを手に入れたのか? 注目したのは、長年ロランの人たちを悩ませてきた強い「風」だった。しかし当時のロラン島には、風車を丸ごと作れるような大企業はなかった。そこで、風車の羽はボートの船体を作っていた会社、発電機は農機具メーカーが作るトラクターの変速機を応用、タワーは鉄塔の建設会社というように、地元の中小企業がそれぞれの得意分野を活かすことで、1基の大きな風車を完成させた。いまでは、島で使う5倍もの電力を自然エネルギーで作り出しているほか、風力発電に関するたくさんの仕事が地域に生まれている。こうしたロラン島の成功事例は、震災後の日本にとって、大きなヒントとなるはずだ。
文/加藤 聡
コメントをお書きください