固定価格買取制度を追い風に 広がる市民共同発電所

長野県小諸市・小諸エコビレッジ内の市民共同発電所。建設工事には市民自らが参加
長野県小諸市・小諸エコビレッジ内の市民共同発電所。建設工事には市民自らが参加

 東日本大震災以降、原発に代わるエネルギーを自分たちの手で作ってしまおうという地域の動きが著しい。その1つが「市民共同発電所」だ。市民共同発電所とは文字通り、市民がお金を出し合って作る再生可能エネルギー発電設備のこと。デンマークやドイツなどで実践されている住民主導の再生可能エネルギー普及の取り組みで、日本でも10年ほど前からNPOや住民が中心となって、市民風車や市民太陽光発電所の建設が行われてきた。昨年7月の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tarif:FIT)」スタート以降は、好条件で売電できるようになったことから、全国各地で市民発電所建設の動きが相次いでいる。

 

 従来は、建設コストに見合うだけの売電価格ではなかったため、補助金などを活用しないことには元をとることが難しかった。そのため、主に(返済不要な)寄付で資金を集め、太陽光発電であれば10kWまでの比較的小さな市民発電所が多かったというのが実情だ。だが、再生可能エネルギーで発電された電気を、一定期間プレミアム価格で買い取ることを保証するFITの導入で、大きな出資や融資を募っても収益の見通しが立つようになり、中大規模の市民共同発電所の建設も十分可能となった。地域で数十世帯分をまかなえるような発電が可能となれば、災害への備えや地域活性化など、市民共同発電所運用の可能性は大いに広がる。

 

 また、市民共同発電所は、さまざまな理由で太陽光発電を自宅に設置できない人でも、小さな金額で再生可能エネルギー発電に参加できる仕組みである。これまで電力会社から一方的に送られてくるものと考えていた電気を、市民自らが関わり、作り出すことで、エネルギーに対する意識は一変するはずだ。

 

 いま、地域からのエネルギーシフトは、着実にその一歩を踏み出しつつある。

 

文/加藤 聡

 

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