IPCCが警鐘を鳴らすもう一つのCO2問題 「海洋酸性化」

CO2の問題は地球温暖化だけではない Photo by USFWS Headquarters
CO2の問題は地球温暖化だけではない Photo by USFWS Headquarters

 工場から出る煙やクルマの排気ガスが、大気中で硫酸などに変化すると、強い酸性を示す雨を降らす。この「酸性雨」は、植物や建造物などに深刻な被害をもたらすとして、一時期大きく注目された。

 

 しかし近年になり、酸性化による被害の心配は、雨から海に変わりつつある。「海洋酸性化」と呼ばれるこの現象は、大気中の二酸化炭素(以下CO2)が海水に溶けて炭酸へと変わり、海の酸性が強まることで起きる。今年9月に発表された、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書の中で、人間活動で排出されるCO2のうち、約3割が海に吸収され、その結果、海洋酸性化が引き起こされていることが示された。

 

 従来、海によるCO2吸収は、大気中のCO2の濃度を抑えてくれることから、地球温暖化を防ぐ役割を担っていた。しかし、このまま大気中へのCO2排出量が増加し続けると、海は現在と同じスピードでCO2を吸収できなくなり、地球温暖化を加速させることになる。さらに海洋酸性化の進行は、海中での炭酸カルシウムの生成を阻害することから、殻や骨格を持つサンゴや貝、プランクトンなどの生物に大きな影響を与え、海洋の生態バランスを崩してしまう懸念も指摘されている。

 

 台風や竜巻、洪水などの被害が頻発し、至るところで地球温暖化の影響を感じるようになってきた。だが、CO2増加による問題は地球温暖化だけではない。今後は大気だけでなく、海洋の面からもCO2対策を講じていく必要があるだろう。

 

文/田中一整

 

気象庁「全球の海洋による二酸化炭素吸収量に関する情報提供の開始について」

http://www.jma.go.jp/jma/press/1311/06a/co2_global2013.html

 

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