
今月初旬(2015年12月)、地球環境の未来を左右する国際会議がパリで開かれた。国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議、略してCOP21と呼ばれる会議だ。
これまで地球温暖化防止に関する国際的な取り決めと言えば京都議定書だった。この議定書が採択されたのが1997年12月。京都で開かれたCOP3だった。今年はその年から数えて18年になる。
京都議定書から続く国際交渉の難航
日本が京都議定書で約束したのは温室効果ガスの排出を1990年比6%削減することだった。約束期間となった2008年から2012年のうちにこの目標を達成しないとペナルティも課せられるという厳しい内容だった。
京都議定書については産業界を中心にその不公平さを指摘する声が多くあった。先進国だけが削減義務を背負い、途上国だという理由で中国やインドのような温室効果ガスを大量に排出する国が含まれなかった。とりまとめに前向きだったアメリカも途上国が参加しないという理由から最終的に京都議定書を離脱。日本だけが重い削減義務を負ったという批判がくすぶった。
京都議定書の約束期間の終了も近づき、次の取り組みを決める会議が始まった。2009年、こうした京都議定書の問題を内包したままCOP15が開かれた。京都議定書を引き継ぐ新たなる国際的な枠組みをつくることを目的に世界各国の首脳がコペンハーゲンに集まった。だが、最後まで先進国と途上国の間の溝が埋まらず、合意文書を採択するに至らず会議は終了した。
難産の末に生まれたパリ協定

“COP21の失敗は人類に破局をもたらしかねない”
会議の数日前、地球温暖化防止を世界に呼びかけるローマ法王がカトリックの信者たちにこんな強いメッセージを発信した。ローマ法王として初めてアフリカを訪問した時の発言だ。
コペンハーゲンのCOP15のような失敗は繰り返せない。そんな緊迫した雰囲気のなか、パリ会議は開かれた。開催直前に起きたテロのため、パリで市民が企画したパレードは中止に追いやられ、物々しい警備のなかでの開催となった。
僕らに近い専門家のなかには、外交交渉が得意なフランスが議長国でもあり、何らかの合意ができると楽観する声もあった。しかし、インドの反対などもあって最終日まで交渉がもつれ合意に至らない。そのために会期を一日延長。削減義務を課すような拘束力を持つ議定書の採択は見送られ、パリ協定という形で合意がもたらされた。
化石燃料の時代は終わった!
世界196か国・地域が参加したこの協定には温室効果ガスの排出のほぼ半分を占める中国、アメリカ、インドも参加し、先進国だけでなく途上国も参加する協定となった。パリ協定の成立に英国のガーディアン紙は「200近い国々が化石燃料の時代を終える協定に調印」と題した記事を掲載。世界のNGOたちは「人類の歴史的転換点」と称賛した。
この協定は、産業革命前の平均気温と比較して世界の気温上昇を2度未満に抑えることを目標に掲げ、より厳しい1.5度に抑える努力をすることも明記した。削減目標こそ課されないが、2度未満に向けて各国が自ら削減目標を設定し、5年ごとに見直すことを義務付けた。2023年からは5年ごとにその進捗状況を確認することも決めている。化石燃料の使用に対して大きな制限が課せられることになったわけだ。
今回、日本が掲げた目標は2030年時点での排出量を2013年比26%削減することだった。目標自体は決して高いものではない。そのため日本の存在感が全く発揮されなかったと批判も浴びている。
我が国の対応はどうあれ、世界は低炭素社会に向けて大きな一歩を踏み出した。先進国から途上国に対して12兆円と言われる支援も実施される。国内・国外で省エネや自然エネルギーなどの事業がさらに活性化するだろう。日本の住宅産業もグローバルな視野を持って動いて行く時代になるはずだ。
編集協力 / 日本住宅新聞
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