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思わず2度見する?!摩訶不思議な鼻「サイガ」

サイガ / Saiga

みなさん、この特徴的な鼻を持った動物を見たことはありますか?

 

この動物は、サイガ」と言う動物です。

 

映画「スターウォーズ」から飛び出してきた!と言われているくらい独特な鼻を持っていますが、知名度は全世界的にあまり高くありません。

 

サイガはマンモスがいる時代から生き抜いてきた動物ですが、実は何度も絶滅の危機にあっています。

サイガってどんな動物?

カザフスタン、ロシア、ウズベキスタン、モンゴルなどの「ステップ」と呼ばれる乾燥した草原に生息し、草やコケなどを食べる草食動物です。

 

以前はイギリスやヨーロッパ、アメリカのアラスカなど、もっと広い範囲に生息していましたが、乱獲などにより絶滅してしまいました。

 

夏は茶色い短い毛に覆われていますが、厳しい寒さの冬になると灰色っぽい長めの毛になります。

長さ20cm〜40cmほどの角は、オスのみに生えています。

この角を使い、メスを争って他のオスと戦います。

驚異的なスタミナ!

サイガは季節ごとに移動しながら暮らしています。

普段は30~40頭の群れで行動しますが、多い時で何千頭もの大規模な群れをつくることがあります。

厳しい冬を避けるために、1日に80〜120kmほど移動することもあるそう。

 

サイガは、オオカミなどの天敵から逃げるスピードもスタミナも持っており、最大速度80kmほどで走ることができます。

ちなみに、時速80kmはライオンの走る速さと同じくらいです。早いですね。

走ることが得意なため、サイガにとっては障害物のないステップのような場所が暮らしやすいのかもしれませんね。

フシギな鼻の形の秘密

サイガの鼻は、なぜこのような形をしているのでしょうか?

 

その理由は、サイガが棲んでいるところに関係しています。

サイガは乾燥したステップに大きな群れで生息しているため、一斉に走り回ったり移動したりするときに、大量に砂ぼこりが舞ってしまいます。

想像するだけでも苦しいですが、もし私たち人間がそんな大量の砂ぼこりを吸ってしまったら、体を悪くしてしまいますよね。しかし、サイガはこの「」を持っているから、大丈夫なのです。

 

 

 

もし砂ぼこりを吸い込んでしまっても、鼻の内部にある大きな空間で、吸い込んだ砂ぼこりをろ過し、綺麗な空気を肺に取り込むことができます。

 

それだけでなく、鼻の大きな表面積で、夏は暑い空気を冷やし、厳しい寒さになる冬には空気を暖めることもできます。

 

また、鼻から発する声でコミュニケーションを取ったり、オスがメスにアピールする時にも役に立つと考えられています。

 

 

ここで、筆者が厳選したクセになるサイガの鼻動画をご紹介します。

2:33〜 鼻のプルプル音。 

54秒〜 ブルンブルンの柔らかい鼻。

サイガの鳴き声。

筆者はだんだん「ウメェ〜」と言っているように聴こえてきてしまっています。

サイガはなぜ絶滅危惧種になってしまったの?

サイガは現在、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで最も絶滅の恐れが高い近絶滅種(critically endangered)に指定されています。

 

サイガが減少してしまった原因は、食用としての狩猟、を目的とした密猟、柵や国境フェンスなどの障害物への追突などがあります。

特に、サイガの角を粉末状にしたものは「羚羊角(れいようかく)」と呼ばれ、解熱などに効く漢方薬として重宝されています。

角を目的にオスが乱獲されてしまうと、メスに対するオスの数が足りない状態が続き、出生率も低くなってしまいます。

 

 

さらに2015年春には、カザフスタンのサイガが謎の病により大量死してしまいました。

 

研究の結果、死因はパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)という細菌の繁殖だったことが明らかになりました。

パスツレラ菌は、サイガが生まれた時から持っている菌であるとされ、血中に入らない限り、通常は無害なもののようですが、気候変動により、今までにない高温多湿の気候が続いたことで、細菌が異常に増殖し、サイガの体がそれに抵抗しきれなくなり、死んでしまったのではないかと言われています。

 

パスツレラ菌により、全世界の生息数の半分以上にあたる20万頭以上のサイガがいなくなってしまいました。

これにより、また絶滅へと一歩近づいてしまったかに思われましたが、サイガのメスは、生まれてから一年後には子供を産めるようになり、しかも、一度に1〜3頭を産むことができます。10年生きると20頭もの子どもを産むことができると言われているほどの高い繁殖力によって、サイガは絶滅を回避することができました。

 

それに加えて、サイガ保護同盟(Saiaga Conservation Alliance, SCA)や現地の動物園などが、教員研修ワークショップを開催し、サイガと彼らが生息する環境の大切さを子どもたちや地元住民に教えるなど、積極的な保護活動を続けています。

 

サイガの優れた繁殖力と、そうした保護団体の活動により生息数はゆるやかに回復しており、2021年にはカザフスタンで80万頭を超えるサイガが確認されています。

 

エコロジーオンラインのショート動画「きこきき」では、今、世界で起きている気候変動について解説しています。ご興味がありましたら覗いてみてくださいね。

コピー・イラスト / kawe

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