オーガニックコットンは信頼関係が育てる

オーガニックコットンでもいろいろ

 

 ここまで書いてきたときドイツのオーガニックコットンメーカーによる偽オーガニック問題が報道されました。これに対するメーカー側の見解も見ました。

 

 これはドイツメーカーのオーガニックコットン製品に遺伝子組換えコットンが混入していたことと、その製品がオーガニックコットンの品質を保証するために設立された認証機関の認証を通っていたというものです。

 遺伝子組み換えコットンについては後述しますが、良心的なオーガニックコットンメーカーでは製品のオーガニック性を保証するための基準を設定しています。そしてその基準を保証するための認証制度があります。その基準に適合した製品に証紙のようなものを付けることで品質を保証しているメーカーもあります。

 しかし昔から続けてきたコットン栽培では当然のことですが、自然のままの有機栽培でしたから、これはオーガニックコットンです。つまり化学肥料を使ってなく、農薬という名の殺虫剤や枯葉剤を使わないで栽培して採れた綿はそのままオーガニックコットンです。その純綿をオーガニックコットンと名をつけても、本当に栽培と加工がオーガニックならいいとも言えます。

 一般の農産物についても、例えば栃木県藤岡町、渡良瀬エコビレッジの町田武士さんの農場では30数年来の有機栽培を続けていますが、なにもオーガニックなどといっているわけではありません。私は町田さんのところのお米や野菜を購入していましたが、オーガニック認証を受けて市販されているお米や野菜より、町田さんの方が安心できます。

 これは町田さんがオーガニックなどという言葉の生まれる前から、自然農法の実践を続けていることを聞き、何度も農場に応援にも行っている間柄だからです。何でもそうですが、自分が信頼している人から購入するのが一番安心できるのです。

消費者に選ぶ基準を保証しているのが認証制度ですが、認証は義務ではありません。また基準の数値も統一したものではありません。それに認証されていないオーガニックコットン製品も出回っています。ですからオーガニックコットンと表示されて販売されている製品でも純度から見ればピンからキリまであるのです。

 

オーガニックコットンの純粋性はそれを作る人の思いから

 

 平成5年から有機栽培緑茶に取り組んできた、静岡県掛川市の「杉本園」さんのお茶を長年取り寄せています。

http://cha.pya.jp/cart/index_01.php

 杉本園さんと出会ったのは10数年前でしたが、当時杉本さんは化学肥料と農薬に汚染されたご自身の茶畑を、有機栽培の茶畑に切り替えるために大変なご苦労をされていました。

 長年にわたる化学肥料の連続使用で、コチコチに固まってしまった畑地をもとの土に戻すには長い年月がかかることを語られていました。お会いしときは有機栽培を始めて3年目の頃でしたが、「まだ完全に戻ってないのですよ」と聞きました。畑が昔のような自然なままの有機の土に戻ったのはそれからなお数年を要したのです。

 その杉本さんから「やっと有機認証がおりました」と聞いたのはそれからまた数年後でした。

 「認証手続きにはいろんなデーターがいりコストもかかるんです」と言うのです。

 「有機の証明がいるのっておかしいですね。農薬栽培の方こそ安全認証がいるんじゃないですかね」とお話ししたことがあります。

 

 私は杉本園さんのお茶には絶対的な安全を確信しているのですが、これは認証されているからではありません。杉本さんのご苦労を知っているからです。

 私は認証制度そのものに疑問を持っています。どんな厳しい基準があってもオーガニックコットンではそれを作る人がそれを詳しく理解していて、さらに強い思いが伴っていなければどこかで妥協が生まれ、省略や不正も起きてしまうものです。生産から消費までの流通経路が長くなるほどこの不安は高まってくるのではないでしょうか。

こう書くと公的な基準を作らなければという声が必ず出てくるのですが、これはお役所に何でも依存しようという発想です。どんな厳格な基準でも守られなければ何もなりません。法定の認証制度などができて、煩わしい書類やデーターを要求されるようになってもらいたくないものです。

 個人と個人の関係から信頼関係は始まります。信頼とは心が伝わっている関係ではないでしょうか。これは企業であっても組織であっても同じです。あの人の会社だから、あの人がいる会社だから、―ここから信頼が生まれます。とりわけオーガニックコットン選びにはこの信頼関係が一番大切な条件になるのではないでしょうか。

 

オーガニックコットンはフェアトレードがぴったり

 

 大量生産、大量消費の行き着いたところが環境を汚染させ、環境起因性の疾患を生み出し、人々を苦しめる原因を作ってきました。その反省から生まれたのがオーガニックという考え方です。

 オーガニックコットンは、栽培はもとより加工や流通の過程においても生産性や効率性を高める発想の対極にあるものです。生産や販売の効率を求めるところからではオーガニックの純粋性は弱まってしまう関係にあるようです。

 オーガニックコットン製品にフェアトレードの取引が多く行われている理由もここにあります。オーガニックコットンは栽培者から適正な価格で引き取ることを保証することによって真正な製品の生産が維持されていくのです。

 このたびインドの零細コットン農家に対して、オーガニックコットンへ転作するための支援が始まりました。オーガニック栽培は少なくとも3年間有機の栽培を続けなければ土壌が戻らないのですが、日本の輸入商社がその転作中の3年間の収穫物もオーガニックと同じ価格で引き取るというものです。

 オーガニックコットンは作る人から売る人まで、さらにそれを買う人まで、大きくつながった助け合いの輪のようなものが次第に出来てきていることがわかります。オーガニックコットン製品を購入することがインドや、その他の地域にもありますが、その地域の貧しい農民の生活を支えていることにもなっているのです。

 オーガニックが原点回帰の運動であることがこのことからも見えてきます。作る人も、売る人も、買う人も、みんながオーガニックコットンでつながっていく未来の共存社会の姿が見えてくるように思えてなりません。 (つづく)

PROFILE

親松 徳二(おやまつ とくじ)

1936年東京生まれ、親松寝具店3代目、1998年エコふとんショップに転換、自然素材寝具の制作、1999年同業者とふとんリサイクル推進協議会設立、布団リサイクルを発信

2000年インターネットショップecofutonオープン

2001年オーガニックコットンふとん、和綿「弓ヶ浜」布団など発売

2008年2月店舗閉店、現在ネットショップで営業中

 

http://www.ecofuton.com/

 

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