種の多様性は気候変動より重要 〜国連レポート〜

広島県安芸太田町の「井仁の棚田」(撮影:岩間敏彦)  *写真はイメージです。記事内容とは直接関係ありません。
広島県安芸太田町の「井仁の棚田」(撮影:岩間敏彦)  *写真はイメージです。記事内容とは直接関係ありません。

 この夏に発表される予定の国連の経済と生物多様性に関するレポートは、気候変動への対策よりも、自然破壊を食い止める世界規模の行動を経済的に行うことの方が重要との内容になると、5月21日に、イギリスのガーディアン誌が掲載している。

 

 薬や受粉、肥沃な土、空気や水など、 "natural goods and services(自然からの資源やサービス)"の価値は、それを守る際に生じるコストの10〜100倍になるという。こうした "自然からの資源やサービス"の価値を経済的に重要と考え世界経済の仕組みのひとつとしない限り、世界環境はますます弱く、ショックを受け易くなり、結果として人命や世界経済を危険にさらすことになるという。

 「自然に対する態度や考え方そのものを大きく変える必要がある。自然は征服するものではなく、それに生かされている、という意識で大切にしなくてはならない」と語るのはレポートの著者で経済学者のPavan Sukhdev氏。

 

 Sukhdev氏は、経済市場の失敗によって自然界に押し付けられる損害について、商売の仕方、消費パターン、自分達の生活のパターンをとことん変える必要があるという。レポートでは世界経済が自然界を考慮すべく、どう変革し運営されるべきかに言及。提案内容には、コミュニティが自然を「使用する」ことで利益を得るのではなく、「守る」ことによって対価を支払われるべきことや、企業は天然資源の利用や搾取に対し、更に厳しい制限を受けるべきこと、会計報告は経済面だけでなく、天然資源や人的資源に関する内容を盛り込むべきこと、などが含まれている。

 

 多様性を保護する結果として得られる経済効果は莫大で、ある調査では、世界規模の自然保護ネットワークの構築には年間約45億ドルかかるが、それらの地域の種の多様性から受ける利益は年間4〜5兆ドルにもなるという。

 

 しかし、今回の国連リポート作成に参加した大手コンサルティング会社、PricewaterhouseCoopersの調査結果によると、世界最大の企業100社のうち、たった2社が生物多様性の減少がビジネスに重要な影響を与えると回答している。

 

文:温野 まき 翻訳サポート:中野 よしえ

サイト

guardian.co.uk

URL: http://ow.ly/3xKMG

 

«一つ前のページへ戻る