やさしさ比べで布団を選ぶ

安っぽくなった「地球にやさしい」もの

 

 テレビコマーシャルでは、原子力発電はCO2を出さないから「地球にやさしい」と言っています。本当に原発はやさしいでしょうか。それならもっと恐ろしい放射能はどうなんだと聞きたくなります。「地球にやさしい○○」といういう言葉が独り歩きしていて、どこにもここにも「やさしい」品物がいっぱい溢れていますが、やさしさの価値も年々安っぽくなってしまいました。

 地球にやさしいといいますが、そもそも地球という大自然に対して、人間があたかも保護者のごとく語っているのが間違いです。美しい自然を汚したのは人間です。地球はやさしくしてくれとは言っていません。大自然は人類の行為の結果を見せてくれているだけです。

 地球にやさしいという言い方は使いやすいので、つい安易に使ってしまうのですが、それがとうとう原発と一緒にされるようになってしまいました。もう使うことはできません。やさしいに代わるもっと厳しい、もっと純粋な伝え方はないものでしょうか。

 これからのあらゆる商品には、環境に負荷を与えることのない、持続可能な循環性が求められています。ゴミにならない、捨てられても土壌を汚さない、自然界のサイクルに乗って循環し続けるものでなければ真の「やさしい」と言えません。

 その意味ではコットン布団は持続可能布団です。持続可能性をサスティナブルと言っていますが、それなら「サスティナブル布団」ということになります。サスティナブルは地球の環境を維持、継続して未来に残していく意味と聞きました。まさにコットン布団にピッタリきました。サステナブルはもっと広い意味がありますからサステナブル寝具の方がいいかも知れません。

 

健康だけでは人にやさしくない


 「地球にやさしい」と一緒によく使われているのが「人にもやさしい」です。人体に有害な汚染物質が入っていない、あるいは健康に良い、安全、という意味で使われています。しかし個人の健康だけでなく、コミュニティー豊かな社会が伴ってこそ幸せなやさしい社会は成り立ちます。

 「人にやさしい」が個人の健康や安全のことだけを指しているのなら、これまた安っぽいやさしさといえます。やさしさは心の状態です。病んでいる人でもやさしい人はいますし、健康で強い人でもやさしくない人もいます。本来のやさしさには、社会全体が維持、継続されていくための共存、共生という積極的な意味が含まれなければならないと思います。

 サスティナブル社会でのやさしさは、地球環境に負荷を与えない製品を選ぶとともに、そこで作られる製品は、作った人も、売った人も、それを買って使う人も、その製品に関わる全ての人にやさしいものになるのではないでしょうか。

 サスティナブルは人類が生存していくための必須の要件のことです。いや人間だけでなく、地球上のすべての動植物が持続して共存できる生物多様性社会のことではないでしょうか。そうなるとやさしいなどという情緒感覚では伝え尽くせない、もっと厳格性を伴ったものになります。人類のこれからの生き方、暮らし方を問いかけているのがサスティナブルではないでしょうか。

 

コットン布団は持続可能社会の優等生


 私どもの作っている布団については特に大型商品ですから、耐用期間を過ぎた後、どのような回収ルートを辿って最終到達点に至るか、またそのルートの環境負荷のことも確認しておかなければなりません。

 ご承知の通り、寝具類のほとんどを占める布団は有料の粗大ゴミ扱いの分類になっていて、この制度が始まって以来常に粗大ゴミの中で一番多量の排出物になっています。ですからゴミの減量化を進める上で廃棄布団の減少は大きな比率を占めています。

 その点では私どもの業界で続けている「布団打ち直し」というリサイクルシステムは、使い続けた布団を何度でも再生して使い続けることができます。打ち直しは今日でも全国の寝具店や一部の生協さんなどで取り扱っていますので、特にコットン布団では、使い古されてもゴミとして廃棄されることなく再利用されているものが少なくありません。

 そして本当に使い切って捨てられても、コットン布団なら自然素材ですから大地に残留することなく大自然に還っていくのです。まさにサスティナブル寝具の優等生と言うことができます。

 今日では大型店や通販を通じて多様な素材の寝具が作られています。この中からサスティナブルの観点から布団を選んでいただくために、つまり「本当のやさしい」布団を選んでいただくために、「布団の素材別環境比較表」を作りました。布団選びに活用いただければ幸いです。(別表参照)

 

■本当のやさしさは環境性と共存性

布団の素材別機能評価表については、自分の得意分野であるコットン布団に点が甘く、独断性の強いものになっています。特に寝心地の評価は個人比が大きく一概に決められないのですが、この表では「環境性」と「共存性」の評価を加えることによって、持続可能社会での布団選びの参考になればと願うものです。

布団が廃棄されるとゴミ問題や環境汚染問題が発生します。この問題は布団の素材を見直すことと、打ち直して使い続けることで解決の方向を見つけることができます。しかしこれは持続可能社会への道のりの一歩でしかありません。

ゴミによる環境汚染の問題は、厳しい価格競争、販売競争で作られる粗悪品や使い続けた後の処分方法を考えないで作られる製品によって引き起こされています。「お財布にやさしい」などと消費者から見て価格が安いものが「やさしい」ことになっていることがあります。しかし安売りの陰には、泣かされている生産者の苦しみがあります。生産原価を割るようなやさしさもまたニセのやさしさと言うことになります。

前回のオーガニックコットンのところで紹介した、フェアートレードによる製品の循環システムは、耕作農民から加工工場、販売業者までが支え合いのつながりで成り立っているものです。この関係は耕作者から始まる各工程で生産費に見合う価格を保証することで信頼の関係を構築し、品質の基準を守っていこうというものです。この関係はみんなで支え合って共存して行こうという関係ですから、価格の買い叩きや払い遅れ、不正があっては持続していけません。

これまで布団ということで、ベットでお休みの方々には無縁と思われるのは困ります。ベットのマット処分はさらに大型ですから、私どもも苦労させられていますし、製造者側の回収負担も大変だと聞いております。

布団もベッドも、いらなくなったらポイ捨てというわけにはいかない商品なのです。ゴミになるものは作らないという原点が守られない限り持続可能社会に至ることは不可能です。環境と共存のバランスが伴った本当のやさしい商品をお選びいただきたいと思います。(つづく)

 

PROFILE

親松 徳二(おやまつ とくじ)

1936年東京生まれ、親松寝具店3代目、1998年エコふとんショップに転換、自然素材寝具の制作、1999年同業者とふとんリサイクル推進協議会設立、布団リサイクルを発信

2000年インターネットショップecofutonオープン

2001年オーガニックコットンふとん、和綿「弓ヶ浜」布団など発売

2008年2月店舗閉店、現在ネットショップで営業中

 

http://www.ecofuton.com/

 

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