6月1日、デンマーク・ロラン島で「日本大使館とのワークショップ」が開催されました! 1

 早いもので、もう6月に突入ですね。日本では梅雨入りという言葉も聞かれる今日この頃ですが、デンマークは、初夏らしくさわやかな快晴が続いています。なにしろ、6月は1年の中で一番美しい季節と言われているだけあって、緑と青空がまぶしく感じるほど。朝も、様々な種類の小鳥のさえずりがあまりにもにぎやかなので目覚めてしまう、という感じです。6月2日はキリストの昇天日の祝日でお休み。学校は3日もお休みで、デンマーク人の多くは、夏休み前の4連休を満喫しています。

 

 この美しい季節の幕開けとなった6月1日、前回のブログで触れた、ロラン市と、デンマークのクリーンテック企業と日本大使館とのワークショップが開催されました。

 これは、日本の自然災害からの復興などに関連し、グリーンエネルギーに関する知恵やノウハウを最大限に活かせるよう、日本とロラン市やデンマーク企業との協力基盤づくりのための考え方や意見交換を行なうことを目的に実現しました。同日、ワークショップの会場となったロラン市市議会場前の広場では、一般に人々に最新のクリーンテックに親しんでもらうための「グリーン・テクノロジー・ツアー2011」が開催され、国内外からクリーンテック企業の展示が行なわれました。

 デンマークは、クリーンテックの分野では世界をリードする国の一つで、この分野において世界第3位に躍り出ようとしています。昨年のデンマーク国内での販売実績はデンマークのGNPの約3.5%を占め、世界市場をリードする存在です。ロラン島は、デンマーク国内でも、ロランCTF(コミュニティ・テスト・ファシリティーズ)のコンセプトの下、クリーンテック技術に関するフルスケールの実証実験を行なえる地域として、また、クリーンテック技術を開発する企業の立地としても最も魅力ある地域として国内外に知られる存在となっています。

 

今回のワークショップに参加した企業は以下の通りです。

● Floating Power Plant(波力エネルギー)

● Grønt Center(グリーン・センター…藻の研究)

● Biokube(浄水装置)

● Vagns VVS(バイオボイラー)

● Dansk Solenergi(太陽光発電機)

● Rask El(地熱暖房、家庭用風力発電機、ヒートポンプ)

● NIRAS(国際コンサルティング会社 ロラン市とは環境エネルギー、産業分野で提携)

● ET Consultants Pte. Ltd. Singaopre(コンサルタント オールボー大学主任研究員)

● TOUR 2012 EUROPE

 

【佐野利男日本大使のプレゼンテーション】

 ワークショップは、まず佐野利男日本大使が、日本の被災地の現状と、菅政権のエネルギー政策の転換、今後の取り組みの可能性についてプレゼンテーションを行ないました。

 被災地の現状については、震源地や被災地域について図で示され、政府算出の被災総額が16〜25兆円に達すること、被災者は2万9千人に及び、避難を強いられている人も10万人を超えることなどが報告されました。また、OECDによると、日本経済は2011年度前半こそマイナスで推移するものの、後半にはプラスに転じるとの試算も紹介。さらに、交通インフラはほぼ、産業界においては6割以上が復旧していることを紹介し、参加者を驚かせました。

 

 そして、現政権のエネルギー政策の転換については、菅首相が先のOECDの設立50周年式典において、2010年に閣議決定したエネルギー基本計画を見直すと宣言したことを報告。課題として原子力発電の高度安全、環境を考慮した化石燃料の利用、再生可能エネルギーを実用化し、エネルギー政策4本柱のひとつとすることをあげ、再生可能エネルギーによる発電比率を2020年代のできるだけ早い時期に20%とすることも併せて紹介しました。

 

日本における再生可能エネルギー導入ポテンシャルと課題については、以下のような報告がありました。

① 太陽光発電

● 発電コストが他の発電方法に比べて高い。

● 発電出力の不安定を解消するシステムの安定化措置が必要

② 風力発電

● 立地条件が限られる(風力、自然公園、景観、バードストライク等)。日本は国土の7割が山岳地帯であり、平地が限られる。海も、遠浅ではなく、海上に風車を建設するのがより困難という部分がデンマークとは大きな違いである。

● 出力が不安定、電気系統システムに制限

● 騒音の問題(音、低周波)

③ バイオマス発電

● 大規模設置のための、原料確保の問題

● CO2削減のためのライフサイクルアセスメントの検証が必要

その他④水力発電、⑤地熱発電など

 

 再生可能エネルギーに関する導入ポテンシャルシナリオについては、FIT(フィードインタリフ)対応シナリオ、FIT+技術革新シナリオ、FIT対応シナリオ+補助金、FIT+技術革新シナリオ+補助金が示され、現時点において、将来的に、日本において導入ポテンシャルが大きい再生可能エネルギーは、風力発電と考えられることがわかりました。

 

 また、民間や自治体のエネルギーへの取り組みの事例として、ソフトバンクの孫正義氏が自然エネルギー協議会を設立することを発表、全国半数以上となる26都道府県が参加を正式に表明したことに加え、休耕地を利用した太陽光発電による「電田プロジェクト」構想も報告されました。

 

 最後に、佐野大使は、世界第3位の経済大国である日本は量ではなく高い品質を求められるハイテク産業を多く抱えており、エネルギーの安定供給が不可欠であることから中央集中型の原子力発電を推進してきたが、今後はエネルギー政策を転換することになり、その移行には時間がかかることを重ねて強調していました。

 

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PROFILE

ニールセン 北村 朋子(にーるせんきたむらともこ)

デンマーク・ロラン島在住のライター、ジャーナリスト、コーディネーター。再生可能エネルギーの利用などの環境や食など、地球と人にうれしいライフスタイル追求がライフワーク。森の幼稚園の運営委員、ロラン市地域活性化委員、デンマーク・インターナショナル・プレスセンター・メディア代表メンバー。

 

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