老齢樹に棲むバクテリアが森の生長を助ける

シアノバクテリアの細胞  Photo by Nat Tarbox
シアノバクテリアの細胞  Photo by Nat Tarbox

 樹齢100年を超える老齢な大木は、そこに生育するコケとある種のバクテリアのお陰で森の生長を促しているという研究が発表された。大きな木がある森林を保護する重要性が注目される。

 

 カナダのマギル大学で博士課程終了後の研究を続けているゾーエ・リンド博士と彼の同僚は、アメリカのアラスカ南部からカリフォルニア北部まで広がる海岸の温帯雨林で老齢樹を研究し、木とコケとバクテリアの相互作用が森林の栄養状態に作用していることを発見。この関係が森の長期的な生長を支えていることを示唆しているという。

 

「老齢樹には役目がある。木々は何ものかに住処を与え、その何ものかはまた他の何ものかに住処を与え、その何ものかは森に栄養を与えている。まるでドミノのような仕組みだ。間接的だが、その最初のステップがないと、つまりこの場合は樹だが、何も起こらないことになる」とリンド博士は説明する。

 

 この物語で大事な役は3つ。1つ目は巨大な老齢樹。2つ目はそれらの樹に生息するコケ。3つ目はコケに関連するシアノバクテリアというバクテリア。シアノバクテリアは大気中から窒素を吸収し植物に供給する「窒素固定」の役を担う。窒素固定ができるのはとても限られた生物だ。

 

 森の生長と発達は、大気中の窒素をどれだけ利用できるかにより決定されると考えられている。北方林の地面に生息するコケに棲むシアノバクテリアが、窒素を供給していることは最近発見されていた。しかし海岸地域の温帯雨林で、それも樹の上のシアノバクテリアについての研究は初めてだ。リンド博士によると、樹の上のコケには地上より多くのシアノバクテリアが生息すること、および樹上のシアノバクテリアは地上のシアノバクテリアより2倍も多くの窒素を固定することを発見した。

 

「シアノバクテリアが発生するには、コケが生息できるような大きくて老齢な樹が必要だ。多くの樹はコケが生えるようになるまでに100年はかかる」とリンド博士は言う。

 

翻訳サポート:中野よしえ

文:温野まき

 

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