愛媛県の中学生・鷲野天音くんが呼びかける地熱発電の重要性

天音くん制作の「はじめよう!地熱発電」のステッカー
天音くん制作の「はじめよう!地熱発電」のステッカー

「日本は世界で3番目の火山国で、地中のエネルギーは豊富にあります。地熱発電を増やすことで安心して暮らせる未来を作りたいと思っています」

 

 そう話すのは愛媛県在住の中学生、鷲野天音(わしのあまと)くん。鷲野くんは小学5年生だった2009年、愛媛県伊方町にある四国電力・伊方発電所で進められていたプルサーマル計画のことを知る。プルサーマルとは、原子力発電の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜて再び原子力発電の燃料(MOX燃料)として活用する仕組みのこと。毒性の強いプルトニウムを使用するだけでなく、通常のウラン燃料と比べて取り扱いが難しいなど、さまざまな危険性が指摘されている。

 

撮影/田頭真理子
撮影/田頭真理子

「これまで原子力発電やプルサーマル発電のことなんてまったく知らなかったけど、本やインターネットで調べていくうちに、すごく恐いものだと感じました」

 

 プルサーマル発電を止めるために何かできないかと考えた鷲野くんは、288人分の子ども署名を集め、愛媛県議会に請願書を提出。結果は不採択となったが、「日本には原発に代わるエネルギー資源がない」という議長の言葉が忘れられず、その後もエネルギーの勉強を続けた。調べていくと、地熱で蒸気を発生させて発電するという火山国である日本にピッタリな発電方法があることがわかった。現在は多くの人に関心を持ってもらおうと、ステッカーやアニメーションを制作し、地熱発電の重要性を訴えている。

 

「自然の神秘さや不思議さに目を見はる感性は、すべての子どもに生まれつき備わっている――」

 

 海洋生物学者・レイチェル・カーソンの著書『センス・オブ・ワンダー』のなかの一節だ。1人の少年の純粋な想いから生まれた地熱発電普及の取り組み。大人たちはその声に、しっかりと耳を傾ける必要があるのではないだろうか。

 

文/加藤 聡

 

はじめよう!地熱発電

http://www.tentsuki.asia/amato/index.html

 

 

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