ストックホルムのSymbioCity 「ハンマビー臨海地区」レポート(1)

無料のフェリーが行き交うハンマビー湾
無料のフェリーが行き交うハンマビー湾

 スウェーデンの首都、ストックホルムは、持続可能な社会を目指して環境面でも先進的な取り組みを続け、2010年には欧州委員会より「環境首都」(グリーンキャピタル)に選ばれた。この受賞には、ストックホルムでここ10年続いているハンマビー臨海地区(Hammarby Sjöstad)の再開発プロジェクトの影響も大きいと言われている。

 

 元々土壌汚染などもある工業地区と古びた港だったこのエリアを、ストックホルム市は持続可能な都市をテーマに開発し、「ハンマビーモデル」と呼ばれる循環型都市環境システムを創り上げた。

 

 新しい発想で作られたハンマビーモデルは世界各国から注目され、中国ではここをお手本に街づくりを行っているところもある。

 

 建設は現在も進行中であるが、2011年の夏に訪れた時には、すでに約1万戸のアパートや、図書館、高齢者のための施設、スポーツ施設、保育園などが作られるほか、公共交通であるバスやトラム、カーフェリーが整備され、約2万5千人が居住する市内でも人気のエリアとして、街は活気づいていた。

 

トラム、バスなど公共交通を使う居住者が約8割と高い
トラム、バスなど公共交通を使う居住者が約8割と高い

 ハンマビー地区に行くには、トラムが便利だ。地下鉄の駅から乗り換えて、ストックホルムの中心から約4km、時間にして20分ほど。地下鉄には大型犬や自転車をかかえた人もいる。ストックホルムは、中心部への車の流入に渋滞税などを果たしているように、車利用をなるべく減らし公共交通を充実させている。この地区でも車はカーシェアリングが主流だ。今後は、トラムを街中まで延長させる計画もあるという。

 

 排水の浄化に努めたハンマビーでは、運河の水質も向上し、サケも釣れるという。夏は、ヨットのほか、水質を浄化させる葦の生い茂った運河で泳ぐ子供たちもいる。また、冬には運河でスケート、周囲の丘でスキーも楽しめる。

 自然と調和し、都市生活も享受できるこのエリアは、当初予想されていた子供のいない夫婦だけでなく、小さな子供のいるファミリーから高齢者まで幅広い居住者を集めている。

 

「ノーマライゼーション」も徹底されている
「ノーマライゼーション」も徹底されている

 確かに、子育て支援の充実しているスウェーデンらしく、ベビーカーを押した子連れママやパパが多い。運河の見えるレストランで母親たちがランチを楽しんだり、車いすに乗った高齢者が犬と散歩したりという光景が当たり前のように見受けられる。

 障害や年齢にかかわらずどんな人々も「地域社会と共に生きる、自然循環の中で生きる」という考え方が完成度の高いレベルで具体化しているのだ。 (以下次号に続く

 

PROFILE

箕輪 弥生(みのわやよい)


環境ライター・マーケティングプランナー、NPO法人そらべあ基金理事

新聞、雑誌、webなど幅広いメディアで、環境と暮らしをテーマにした情報発信や、環境に配慮した商品の企画・開発などにかかわる。著書に『エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123』『環境生活のススメ』(飛鳥新社)『LOHASで行こう!』(ソニー・マガジンズ)などがある。自身も自然エネルギーや雨水を活用したエコハウスに住む。

 

オフィシャルサイト:http://gogreen.petit.cc/

 

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