電力でつなぐ! アジア・太平洋の未来

 2050年までに、日本、東南アジア、オーストラリアを含めたアジア・太平洋地域全体で再生可能エネルギーの開発を進め、互いの電力網をつなぐことで安定的な電力供給を目指す――。このアイデアの名称は「アジア・太平洋州電力網構想」。提唱している日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)では、その第一段階として現在、北九州―釜山間を結ぶ日韓間海底ケーブルの設置に向けた協議を進めているという。

 

 再生可能エネルギー、特に太陽光発電や風力発電は天候に左右されやすいという側面を持つ。この電力網が完成すると、仮に悪天候による日本での発電不足が起きた場合も、オーストラリアの砂漠で作られた太陽光による電力を、日本に運ぶことが可能となるという。ソフトバンクの孫正義社長率いる自然エネルギー財団の「アジアスーパーグリッド構想」も、中国やモンゴル、インドなどを含むアジア諸国での国際電力ネットワークの構築によって、電力供給の安定化を目指そうという同様のアイデアだ。

 

 昨年4月には、イギリス―オランダ間を海底ケーブルで結ぶ「ブリットネット」と呼ばれる電力網の稼働がスタートしており、国同士の電力融通が行われている。しかし、国ごとの電力事情が大きく異なるアジア・太平洋地域での実現のハードルの高さは、欧州の比ではない。利害をどう調整するか、そして日本の再生可能エネルギー技術をどう活用・移転していくかが、今後の広域送電網実現のポイントとなりそうだ。

 

文/田中一整

 

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