約40年ぶりに国産麻糸が製品化

「よりひめ」というブランドで製品化された国産麻糸
「よりひめ」というブランドで製品化された国産麻糸

 夏になると、店頭に並ぶ涼しげな麻の服。実はこれらの麻布の原料はすべて海外から輸入される亜麻(あま)、苧麻(ちょま)などで、本来の「麻」とは異なる植物でできている。

 

 もともと日本では「麻」といえば「大麻(たいま)」で、麻文化の歴史は1万年以上もさかのぼる。なかでも「麻布」は戦前までは生活の必需品だった。ところが麻布を織るために必要な国産「麻糸」は、昭和40年代初期に流通が途絶えてしまっている。現在、麻布織りに使えるレベルの“麻糸績(う)み[大麻の繊維から麻糸を作る手仕事]”ができる女性は全国に数名しかおらず、いずれも80歳以上という高齢だ。

 

 そこで、風前の灯火となっているこの技術を次世代につなぐ取り組みが始まり、注目を集めている。東京・自由が丘のサロン・アンジェリでは、麻糸の保存活動に努める大麻博物館(栃木県)の高安淳一さんを講師に招いて、2012年7月に「麻糸績み後継者養成プロジェクト」を立ち上げた。その結果、約40年ぶりに国産麻糸の製品化が実現した。伝統の麻布を織るために使われる麻糸づくりは、機械化できない熟練の技術が求められるため、今後の後継者の育成にますます期待が寄せられている。

 

*「麻糸績み後継者養成講座」についてはこちらもご参照ください。

おひさまスタイル

http://ohisamastyle.jp/column/archives/2012/08/17-112909/

 

文/温野まき

 

«一つ前のページへ戻る