がらくたの紡ぐ歌を聴け!「ぼっこやの美 綾部和夫の世界」

 8月3・4日の2日にわたって、東京ビッグサイト東1ホールで「骨董ジャンボリー 2013 SUMMER」というイベントが開催される。全国約500のディーラーが、国内、国外の骨董やアンティーク、ビンテージの雑貨などを持ち寄る一大イベントだ。

 

 このイベントの特別展示として名を連ねるのが「ぼっこやの美 綾部和夫の世界」。その中心となる綾部和夫氏は、大手芸能プロダクションで「山下久美子」をプロデュース。その後独立し、マネージャーとして「エレファントカシマシ」を世に送り出す。音楽業界を退いてから「BOKKOYA双啓舎」で「ほろびゆく鉄・サビ」の再生を手がけるという希有な経歴の持ち主だ。

 展示のタイトルの「ぼっこ」は長野や静岡の方言でボロやがらくたを指す。現代社会に生きる私たちにとってゴミに分類される代物だろう。その「ぼっこ」に深く関わることを生業にしたのが綾部和夫氏だ。

 僕らの仕事とも縁の深いリサイクル業者たちは「ゴミは宝」をキャッチフレーズにする。綾部氏が手がけるのもまあ同じことだ。リサイクル業者が手がけるのはゴミを「資源」に変えることだが、綾部氏はゴミに「アート」としての生命を吹き込む。

 

 そんな彼が最近こだわっているのが鉄なのだという。古くから人間とともにあり、暮らしを支えてきた鉄は「酸化」という変化を起こす。水にふれ、酸素にふれることで鉄は腐食する。生活を支える道具にとって酸化は好ましくないが、長い年月をかけた酸化のありさまが違う意味で何かを訴えかけてくる。その訴えに耳を傾けるのが彼の仕事と言える。 

  

 原発の再稼働しかり、TPPへの参加しかり、目先の利益のみで社会の方向性が決まっていく。効率的でないものが社会から退場させられることもしばしば起こる。そうして物事が均質化し、多様な存在を認めない社会が形作られていく。

 この展示会では「ゴミ」が「アート」に生まれ変わる。私たちの視点の転換によって生じてくる現象だ。多くの社会問題も私たちの視点に転換さえ起これば、違った見方、違った解決策も見えてくるのだろう。

 

 ま、そんな難しいことを考えることもなく、「ぼっこ」が「アート」に生まれ変わる世界に身を委ねるだけでも楽しいか。

 

骨董ジャンボリー 2013 SUMMER

ぼっこやの美 綾部和夫の世界

 

文:上岡 裕 

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