2016年

2月

23日

<Music Go! green アルバム再掘レビュー>#1 久保田麻琴 / まちぼうけ

ひっそりと産まれた煌めき

※アーティスト写真はNISHIKIの音楽写真館より(更新が停止しており、連絡手段がないため無断で使用させていただく形になりますが、もしも上記ブログの管理人の方がこのページを見たらご一報ください。)
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70年代、当時の若き音楽家達はいかに西洋の音楽に肉薄するかを研究していた。
内田裕也を筆頭に、新時代の音楽<ニューロック>を作るのだという使命感に駆られた数多のバンドが登場しては消えていった。

 

その潮流の真っただ中にいたようでその実、対極にあったかのような「はっぴいえんど」もまた元はアンチ歌謡的コンセプトで立ち上げられたバンドであった。

そして「はっぴいえんど」のベーシスト細野晴臣氏と交流が深かった人物こそ元「裸のラリーズ」ベーシストの久保田麻琴である。

 

「裸のラリーズ」はそれこそ大音量のノイズを操る音楽集団だったのだが、久保田麻琴は脱退後ソロ一枚を残し、ラリーズとは全く毛色の違う「久保田麻琴と夕焼け楽団」を結成している。

(「久保田麻琴Ⅱ」とクレジットされている「サンセット・ギャング」は実質的な夕焼け楽団の1stであるため、ここではソロと数えないこととした)

この時期久保田氏は盟友細野晴臣と主に活動を共にしていたこともあり細野晴臣ファンの中には夕焼け楽団の作品を聴いたことがある方もいるだろう。

 

彼らの音楽はいわゆるエキゾティカとひとくくりにして語られることがあるが、細野晴臣は非肉体的であり離島的アプローチであったのに対し、久保田麻琴は肉体的で大陸的アプローチ。細野氏の音楽は良い意味で地に足がついていないが、久保田氏のそれは地に根を張っている。

その違いはラリーズ脱退後、東芝にひっそりと残したソロ作にもすでに表れている。

アシッドフォーク?

このアルバム、音楽好きからはアシッドフォークと呼ばれている。

「アシッド」という響きからシタールがかき鳴らされ、タブラが鳴り響いているような印象を受けるかもしれないが、ノーシタール、ノータブラであり、ノードラッグである。

 

その名にアシッドフォークを冠している「ACID FOLK VISIONS」というコンピレーションの解説書の小山哲人氏の言葉を借りれば、「海外では自主制作盤などを含めてメインストリームから外れたフォークは概ね<アシッド・フォーク>とするような傾向があるのだ」とのこと。

ともあれ、内容はと言えば非常に良質であり尚且つ古さを感じさせない物となっている。

表題曲まちぼうけは音羽信が作詞したものであり、姉妹作「わすれがたみ」にもまちぼうけとともに詞を提供した「挽歌」が全く異なる曲を付けられて収録されている。

この曲は久保田氏が自身のYoutubeアカウントで公開しているので、ありがたくここに掲載させていただく。

情感がこぼれ落ちる感触

お聴きいただいたなら分かると思うが、地にしっかりと足を付けている感触と溢れんばかりの情感が込められている。最後のドラムとピアノとスチールギターとオルガンが重なり合っていく部分に全てが集約されていると言ってもいい。

氏の日本人離れした歌唱法もあると思うが1973年にここまで高度に日本的な情緒と西洋的なサウンドを組み合わせていた。

そのようなことを目指した作品としてはっぴいえんどがこのアルバムに2年先んじているのだが、彼らはラブソングにしてもリスペクト元のウエストコースト的な、どこかカラッとした印象を受けるのに対し久保田麻琴の音楽は水滴が浮き出そうなほどしっとりと濡れた感触がある。

 

このような感触を受けたアルバムは私の薄い人生経験の中ではこのまちぼうけだけである。

 

 

最後になるが、このアルバムは数年前に紙ジャケットで再発されたものの、現在は廃盤である。

マスターテープが紛失していることと何か関係があるのかは分からないが気軽に入手できるようになることをそして多くの人々に広く聴かれることを願っている。

 

(LPの再発盤は未確認であるが、再発盤は全て盤起こしとなっている。)

文 / 上岡賢

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