間伐ネットが「Forest Good 2016交流セミナー」開催

被災地の間伐材で日本一の割り箸づくりなどを紹介

間伐・間伐材関係19団体で組織する間伐・間伐材利用推進ネットワーク(間伐ネット、会長=佐藤重芳・全国森林組合連合会会長)は12月2日、東京・京橋の中央区立環境情報センター(東京スクエアガーデン内)で、「Forest Good 2016交流セミナー」を開催しました。

 

これまでの全国間伐・間伐材利用コンクール受賞者による基調講演では、2011年の間伐推進中央協議会会長賞を受賞した株式会社磐城高箸の高橋正行社長が、「間伐コンクールから全国へ!人と環境にやさしい日本一の割り箸づくり」と題して同社の取り組みを紹介。また、Forest Goodプロジェクトの取り組みとして、女子美術大学芸術学部アート・デザイン表現学科ヒーリング表現領域の山野雅之教授が、「女子美術大学によるForest Goodキャラクターの開発」について紹介しました。

被災三県の間伐材で「希望のかけ箸」

㈱磐城高箸は福島県いわき産のスギ間伐材を使用した高級割り箸を製造・販売しています。原木からの一貫製造で、剥いた皮は木材の乾燥用ボイラーの燃料に使用し、おが粉は近隣の養豚農家が敷き藁の代わりに使用するなど、環境負荷の徹底的な軽減にも取り組んだ経営をしています。

神奈川県出身の高橋社長は祖父が携わっていた、いわきの林業に興味を持って林業の世界に飛び込み、2010年に磐城高箸を設立しました。同社は、国産割り箸の中でも最高級品を製造しており、2015年にいわき市で開かれた第7回太平洋・島サミットなどの国際会議の食事の席でも使用されています。

高い品質とデザインで評価が高い同社の割り箸ですが、設立から半年で東日本大震災が発生。風評被害などもあり高橋社長も会社をたたもうと考えたそうです。そんな時、東北産の食材を応援する復興支援団体が、同社の在庫を買い取って独自のパッケージデザインで販売(売上全てを寄付)するという取り組みが生まれました。

こうした動きを受けて同社でも、岩手県陸前高田市の気仙杉、宮城県栗原市の栗駒杉、そして地元の磐城杉の被災三県の間伐材を使用した「希望のかけ箸」を開発。定価は義援金付きワンコイン(税別500円、うち義援金150円)で、2011年の間伐コンクールで前記の賞を受賞したほか、グッドデザイン賞やふくしまおいしい大賞優秀賞など、県内外で様々な賞を受賞しました。

「希望のかけ箸」は、オリジナルパッケージは3県の県鳥(キビタキ、ガン、キジ)をデザインしたものですが、くまもんパッケージの熊本復興応援版や沖縄バージョン等々、様々なバリエーションが誕生しています。また、同社では割り箸以外にも、「北限のひのき鉛筆」や、不良品の割り箸をチップ化して使用した「眠り杉枕」などの開発に取り組んでいます。

同社の割り箸に使用されるのはおよそ60~70年生のスギ。そのスギの中央の心材(赤い部分)が育つまでに10年かかり、その間ずっと下草刈りなどの大変な作業が必要になります。つまり50~60年前の先人の大変な作業があって木材が利用できるということ。しかし、国産材の価格は安く、そうした先人の努力が報われているとは言い難い現実があります。髙橋社長は、一番身近な割り箸に製品化することによって、そうした先人の大変な努力が伝われば、などと話していました。

ヒーリングアートとしてキャラクターデザイン

2016年はForest Goodプロジェクトの取り組みとして、女子美とコラボした「かんばつ王国」のキャラクターを開発しました。女子美は1992年から小児病棟を中心とした医療現場でのヒーリング・アートプロジェクトに取り組んでいます。入院生活を送っている子どもたちにも親しまれるようなオリジナルキャラクターのデザインなどにも取り組んでおり、そうした活動から今回の間伐キャラクターのデザインにも繋がりました。

さらにこのプロジェクトのスピンオフとして『ゴッドと踊ろう☆かんばつ体操』が誕生。セミナーでも女子美の学生さんがかんばつ体操を披露してくれました。

取材 / 文 大川原通之

 

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