· 

大西洋の海洋循環は崩壊に向かうのか。新しい研究でわかったやばい現状

北大西洋に真水を供給するグリーンランドの氷河 Photo by Sebastian We / CC BY-NC 2.0 DEED
北大西洋に真水を供給するグリーンランドの氷河 Photo by Sebastian We / CC BY-NC 2.0 DEED

海外の環境ニュースやSNSを見ていると、AMOC(大西洋南北熱円循環)に関する不安を誘う投稿が圧倒的に多い。

 

2004年に米国で製作された「デイ・アフター・トゥモロー」が、このAMOCをテーマに氷河期に襲われる北米やヨーロッパを描いて話題になった。

 

当時は環境省のお偉いさんでも「何で温暖化なのに氷河期が来るの?」と首をかしげる映画だったのだが、その後、世界各地の研究者たちによって研究が進み、すでに私たちの地球が映画で起きたようなことを体験する可能性があることが明確になってきた。

 

AMOCは熱帯地域の温かい海水を北へと運び、蒸発を繰り返しながら塩分濃度を上げ、北大西洋で比重が重くなり、沈み込んで熱帯に戻るという水の循環を繰り返している。

 

ところが地球温暖化によってグリーンランドの氷河や北極の氷床が溶け出し、真水によって塩分濃度を薄めてしまうため、海水が沈み込まなくなり、AMOCや止まったり、スローになったりする現象が起きると囁かれている。

 

AMOCの存在によって温暖な北米とヨーロッパが保持されているが、この機能に異常が生ずると100年で気温が30℃低下し、海水面は1メートル上昇する可能性があるという。ここまでの急激な変化にはどんな適応策も現実には対応できない。

 

今回の研究はオランダのスーパーコンピュータを活用して行われた。AMOCに淡水の量を少しずつ増やしていくとモデル内のAMOCは弱まり、突然、崩壊した。こうしたモデルでAMOCの崩壊が確認されたのは今回が初めてだという。

 

2025年にAMOC崩壊の可能性があるとする研究も出されている。今年は産業革命後の気温上昇が1.5℃を超える年になる。酷暑の夏になってもグリーンランドの氷河の行方にもしっかりと気を配る必要がありそうだ。


<参照リンク>

Extreme Climate Impacts From Collapse of a Key Atlantic Ocean Current Could be Worse Than Expected, a New Study Warns
Atlantic current shutdown is a real danger, suggests simulation


翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部

www.eco-online.org Blog Feed

北極圏の「海の光」が告げる生態系の激変 (土, 08 11月 2025)
>> 続きを読む

霧島酒造×スターバックスがSDGsで連携!「KIRISHIMA GREENSHIP icoia」で生まれるサステナブルな憩い (Sat, 01 Nov 2025)
>> 続きを読む

気候行動の方向性は正しいが、速度を上げる必要がある!国連気候変動枠組条約サイモン・スティール事務局長 (Sat, 01 Nov 2025)
>> 続きを読む

気候変動が奪う「土壌の多機能性」 地下の生態系は今? (Fri, 31 Oct 2025)
>> 続きを読む

気候変動が脅かす古代エジプトの宝 ツタンカーメン王墓が危ない! (Mon, 27 Oct 2025)
>> 続きを読む

大気中のCO2が過去最悪のペースで増加!地球温暖化のブレーキが壊れ始めている (Sun, 19 Oct 2025)
>> 続きを読む

地球は破滅的な転換点に到達した! サンゴ礁の未曽有の死滅が告げる地球の危機 (Sun, 19 Oct 2025)
>> 続きを読む

「カーボンニュートラルACTION」のポッドキャストが配信開始! (Wed, 15 Oct 2025)
>> 続きを読む

南極の浅瀬から発見された「メタンの泉」:気候変動が引き起こす新たな脅威 (Sun, 12 Oct 2025)
>> 続きを読む

歴史的な転換期を迎えた世界の電力供給!太陽光と風力が初めて石炭を追い抜く (Sun, 12 Oct 2025)
>> 続きを読む

«一つ前のページへ戻る