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気候変動が脅かす古代エジプトの宝 ツタンカーメン王墓が危ない!

Nerve net, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

古代エジプトの壮大な歴史を今に伝えるツタンカーメン王の墓(KV62)が、地球温暖化によって引き起こされる気候変動の影響により、崩壊の危機に瀕しているという深刻な報告がなされた。これは、単なる建物の老朽化ではなく、人類の貴重な文化遺産が、現代の環境問題によって直接的な脅威に晒されていることを示す事例である。

 

この研究は、高性能な3次元シミュレーションソフトウェア(PLAXIS 3D)と、岩盤の継ぎ目や亀裂を考慮したモデルを用いて、王墓の地盤工学的な安定性を詳細に解析したものだ。解析の結果、王墓の構造的健全性を脅かす最大の要因の一つとして、気候変動による豪雨と鉄砲水の増加が浮かび上がってきた。

 

エジプトの「王家の谷」は乾燥地帯であり、通常は雨が少ない。しかし、気候変動の影響で、近年は短時間で大量の雨が降るゲリラ豪雨が発生しやすくなっている。この豪雨が引き起こす鉄砲水は、谷を流れ下り、ツタンカーメン王墓を含む多くの墓を水浸しにする。実際、1994年にも大規模な鉄砲水が発生し、多くの墓が被害を受けている。

 

この鉄砲水の影響は甚大である。王墓が埋まる多孔質の石灰岩や泥岩は、水分を吸収すると著しく弱くなる。特に王墓の内部を貫く大きな断層線に沿って雨水が浸透すると、岩盤の強度が低下し、墓の天井や壁にかかる山全体の重さによるストレスが限界に達してしまう。研究者によると、この浸水が、前室や埋葬室の天井に亀裂を生じさせ、事態を悪化させている主要因であるという。

 

目に見える影響としては、天井の亀裂や、岩石が突然剥がれ落ちる現象が確認されており、王墓の構造的な完全性が危険に晒されている。さらに、雨水が墓の内部に侵入することで、湿度レベルが上昇し、壁画にカビ(真菌)が発生したり、顔料が剥がれ落ちたりする原因にもなっている。これは、王墓の構造的な安定性と内部の芸術的な価値の両方を同時に脅かす複合的な危機である。

 

この研究は、王墓の崩壊を防ぐために、湿度の変動を抑える対策や、岩盤を強化し補強するプログラムが必要であると結論付けている。ツタンカーメン王墓は、世界が共有すべき人類の貴重な遺産であり、その保存は、エジプト一国だけの問題ではない。気候変動が文化遺産にもたらすこの具体的な脅威は、私たちが地球温暖化対策を加速させ、未来の世代のために歴史を守り継いでいくことの重要性を、改めて強く訴えかけているのである。

 

<関連サイト>
3d stability modelling of Tutankhamen,s Tomb (Kv62) using Plaxis 3d with jointed rock model

 

翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部(AIを使用)

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