生物多様性 · 30日 11月 2025

生態系の「保険」が失われる！鳥の国際研究が明らかにした、地球の回復力の危機

地球上に暮らす私たちが、日々の生活を安心して送ることができるのは、自然の力、すなわち生態系が安定しているからである。しかし、私たち人間の暮らしの変化が、この見えない安定性を静かに蝕んでいるという、新しい研究結果が発表された。インペリアル・カレッジ・ロンドンを中心とした国際研究チームが、世界中の野鳥を対象に、生態系が持つ「回復力（レジリエンス）」の危機を明らかにしたのだ。

この研究の核となるのは、「機能的冗長性（Functional Redundancy）」という考え方である。これは少し難しい言葉だが、簡単に言えば、「万が一のための保険」のようなもの。自然の豊かな森や環境では、受粉、種子の散布、害虫の捕食といった、生態系にとって欠かせない大切な役割を、一種類の鳥だけでなく、多くの種類の鳥が「代わりとなって」担っている。

これは、私たちが予期せぬ事態に備えて保険に入ったり、データのバックアップを用意したりするのと似ており、特定の種が失われても、他の種がその穴を埋めてくれるため、生態系全体がショックに強い「保険」のようなものを持っている状態だと言える。

ところが、都市開発や農地の拡大といった「人間の土地利用の変化」が、世界中でこの大切な保険を静かに失わせていることが分かった。研究チームは世界1,200か所の約3,700種の鳥のデータを分析し、人間の手が加わった土地では、これらの重要な生態的役割を担う種の数が減り、「機能的多様性」が損なわれていることを突き止めたのである。

研究をリードしたトーマス・ウィークス氏は、この状況を「システムからすべての遊びが取り除かれている」と表現している。つまり、人間の活動によって攪乱された環境では、環境の変化に強い、ごく少数の種の鳥ばかりが生き残り、結果として生態系全体の役割が極めて単純化されてしまうのだ。コンピュータを使った絶滅シミュレーションでも、この「緩衝材」が失われた生態系は、将来、気候変動などの小さな環境変化が起きただけでも、生命維持に不可欠なサービスが一気に崩壊するリスクが高まることが示された。

生態系ネットワークのこの単純化は、単に鳥が減るという問題にとどまらない。森の再生能力の低下、地球温暖化対策に重要なCO2を貯め込む力の減退、そして作物の害虫の増加といった、私たち人間にも大きな影響を与える「連鎖的な効果」を引き起こす可能性がある。

この研究は、私たちが、目に見える美しい景観や特定の動物の「数」を守るだけでなく、目に見えないところで働く「種が担う役割の多様性」、すなわち生態系の「保険」を維持・回復させることが、地球の健康と、私たちの経済的な安定性を支える上で、今、最も緊急に取り組むべき課題であることを教えてくれている。

翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部（AIを使用）