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命を削るプラスチックの代償:2040年までに失われる「8300万年の健康」

Image by Bakhrom Tursunov from Pixabay

 

私たちの生活のあらゆる場所に存在するプラスチック。軽くて丈夫、そして安価なこの素材は、現代文明を支える立役者だ。しかし、その便利さの裏側で、人類は「健康」というあまりにも大きな代償を支払い続けている。

権威ある医学誌『ランセット』に掲載された最新の研究報告は、2016年から2040年までの間に、プラスチックが人類から累計で「8300万年分」もの健やかな年月を奪い去る可能性があると警告している。これは、私たちが直視しなければならない、静かな、しかし巨大な危機の記録である。

 


🏭 採掘から廃棄まで:終わりのない健康リスク

この研究の最大の特徴は、プラスチックを単なる「ゴミ」としてではなく、その一生(ライフサイクル)を通じて健康への影響を評価した点にある。プラスチックの害は、私たちがポイ捨てした後に始まるのではない。

 

1. 原料の採掘と生産: 石油やガスを掘り出し、化学工場でプラスチックに加工する段階で、労働者や周辺住民は有害な化学物質や微小な粒子にさらされる。


2. 使用段階: 容器や包装から溶け出す添加剤(内分泌攪乱物質など)や、空気中を舞うマイクロプラスチックが、私たちの体内へと入り込む。


3. 廃棄と焼却: 適切に処理されないプラスチックが環境を汚染し、焼却される際には猛毒のダイオキシンなどが放出される。

 

つまり、プラスチックは生まれた瞬間から土に還る(あるいは還らない)その時まで、絶え間なく毒性を振りまいているのである。

 

⏳ 「8300万年」という数字が意味するもの

研究チームは、プラスチック由来の病気や障害によって失われる「健康な人生の期間」を、DALY(障害調整生存年)という指標で算出した。その結果、2040年までに人類が失う健康な時間は、合計で8300万年に達するという衝撃的な予測が出たのである。

この数字には、プラスチックに含まれる化学物質が引き起こすがん、不妊、発達障害、そして心血管疾患などが含まれている。これらは単なる病名ではなく、一人ひとりの人生から奪われた、本来なら家族と笑い合い、健やかに過ごせたはずの時間そのものだ。

 

🌍 深まる格差と「環境の不正義」

さらに悲しい事実は、この健康被害が世界で平等に起きているわけではないということだ。プラスチックの生産拠点や、先進国から送られてくる廃プラスチックの処理場が集まる低・中所得国の人々が、最も深刻な被害を受けている。自分たちが消費したわけではないプラスチックのツケを、最も弱い立場の人々が健康という形で支払わされている「環境の不正義」が、今この瞬間も進行している。

 


✨ 私たちの手に残された選択

この研究は、私たちを怖がらせるために発表されたのではない。プラスチック汚染を「海の生き物の問題」としてだけでなく、「私たちの命と直結する公衆衛生の危機」として再定義するためにある。

今、国際社会ではプラスチックの生産量そのものを規制する「国際プラスチック条約」の策定が進められている。私たちにできることは、単にリサイクルを頑張ることだけではない。この便利な素材が、実は私たちの未来を少しずつ削っているという事実に気づき、社会全体の仕組みを変えるために声を上げることが重要だ。

プラスチックへの依存を減らすことは、地球をきれいにすること以上に、私たち自身と、これから生まれてくる子供たちの「健やかな時間」を取り戻すための、最も優しい投資なのである。

 

<関連サイト>

Global health burdens of plastics: a lifecycle assessment model from 2016 to 2040

 

翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部(AIを使用)

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