
エコロジーオンラインは17年というNPO活動のなかで様々な分野のチャレンジをしてきました。
住宅分野の取り組みでは、低炭素型のまちづくりをドイツに学ぶ「クラブヴォーバン」という法人をつくりました。その取り組みから家の燃費を住宅ビジネスで活用する日本エネルギーパス協会が生まれています。
農業分野については、日本初のオーガニック和綿Tシャツをつくるなど、循環型農業の支援をしてきました。この取り組みは後に東日本大震災の被災地に広がるコットン栽培につながります。
そうした体験を生かし、本格的に農業をするためにカラフルファームという農業法人をつくったのが昨年のこと。仲間たちと未来の農業を語ることも多くなりました。
ソーシャルビジネスとしての「農業」
環境保護に関わるNPO法人として、営利事業を手がける際にはいろいろな配慮が必要になります。私たちが手がける事業によって自然環境が破壊されても困りますし、働く人たちの労働環境も気にしないといけません。自分たちが手がける営利事業で環境や人権を侵害してしまったら、それまでの信頼も一瞬で水泡に帰してしまいます。儲かるからといって仕事にできない難しさがあるのです。
だからといって経済活動を否定しては多くの人の理解は得られません。それは私たちNPOに共通する課題です。そのため国連を中心に「持続可能な開発」という考えが広がってきました。自分たちの世代だけの欲求にとらわれることなく、将来の世代の欲求を満たす開発のあり方を求めるのです。
日本において「持続可能な開発」を考える場合、少子高齢化による人口減が大きな問題となります。最も大きな衝撃を受けるのは第一次産業を経済の柱とする地方の市町村です。数年前、2040年には日本の自治体の半数が消滅する可能性があると話題になりました。持続可能とは“真逆”の消滅可能な地域が増えているのが現状です。
そうした大波を受けて第一次産業の担い手が失われることは消費者にとって大きな痛手です。そして、日本の持続可能性を著しく下げることにつながるでしょう。
そうした課題に対応するために新しい農業を模索する法人をつくることにしました。それがカラフルファームです。
自然のエネルギーも収穫する農業へ
私たちは食物抜きに生きることはできません。そういう意味で農業の需要が失われることはありません。しかし、経済効率だけを追いかけて「食」の生産をすると持続可能にはなりません。そのために考えるべきはダイバーシティ(多様性)だと感じます。その土地でどんな作物を育てるかを考えるとともに、それ以外にどんな価値を生み出せるかを考えるのです。
最近、農地の上に太陽光発電を設置するソーラーシェアリングが話題になってきました。しかし、それ以外にも考えられることはたくさんあります。草刈りに苦労する土地で発電を手がけたり、森から生まれる間伐材を熱に変えたり、農作物の廃棄物を電気に変えたりすることなどです。
太陽や水などの自然の恵みを現代のテクノロジーをつかってバイオマス素材やエネルギーとして収穫する。そんな農業ができれば持続的な雇用も生まれるはずです。
社会と農業をつなぐユニバーサル農業
国連が訴える「持続可能な開発」の取り組みのなかにはたくさんの項目があります。そのなかには貧困や飢餓の解消や健康で格差のない社会づくりなどの課題も含まれます。そうしたことを可能にする農業にユニバーサル農業があります。
農業には安全で安心な食料を生産する役割以外にも、様々な効用があると言われます。植物、動物、土にふれることによって癒される心理的効果、農作業でカラダを動かすことによって得られる身体的効果、植物が育っていく過程を理解する教育的効果などです。
これらの価値を生かして事業をするのがユニバーサル農業。農業の理解の促進と社会的な価値の向上を図ります。
高齢者や障がいを持ったみなさんに働いてもらって新たな雇用をつくり、心理的、身体的な効能をもたらしていく。カラフルファームをそんなことができる法人に育てられたら素晴らしいなと思ってがんばっています。
文 / 上岡裕(協力:日本住宅新聞)
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