太陽熱、ガス併用など続々 進化するヒートポンプ技術

ヒートポンプの仕組みを学べるエコエコポンプ。 ポンプでボトル内の空気を圧縮すると、風船がしぼみ、中の温度計の表示が上がる
ヒートポンプの仕組みを学べるエコエコポンプ。 ポンプでボトル内の空気を圧縮すると、風船がしぼみ、中の温度計の表示が上がる

 空気の熱でお湯を沸かす――。

 省エネ型給湯器で知られる「エコキュート」のキャッチコピーだ。テレビCMなどで耳にしたことがある人は多いだろうが、その仕組みについてはあまり知られていないかもしれない。

 

 エコキュートに使われているのはヒートポンプという技術。わずかな電気を使い、空気中から熱を集めて圧縮することで、投入エネルギーの数倍もの熱エネルギーを作ることができるのが大きな特徴だ。身近なところではエアコンにも使われている。割高な光熱費というイメージとは異なり、エアコンは省エネ機器の優等生といえる。

 エコキュートの場合、使用する電力1に対し、約4倍ものエネルギーを生み出すことができる。この効率を測る目安として、消費電力1kW当たりの冷却・加熱能力を示す「エネルギー消費効率(COP:Coefficient Of Performance)」が使われる。この数字は大きければ大きいほうが良い。ただし、電気は化石燃料など(1次エネルギー)から作られており、排熱や送電ロスが生じるため、実際に使用されるエネルギーは40%程度。COP 4の機器を使用した実質のCOP値は、0.4×4=1.6だ。それでも、通常のガス燃焼式給湯器のCOPは0.8というから、ヒートポンプのエネルギー効率がいかに優れているかがわかる。

 

 だが、利点ばかりではない。電力の安い夜間に1日分のお湯を作って溜めておくエコキュートでは、湯切れの心配や、夜の入浴時には若干お湯が冷めてしまうということが起きる。追い焚きは、タンク内の熱湯との熱交換によっておこなうため効率が悪い。 こうした問題を解決してくれるのが、リンナイから4月に発売予定の「ハイブリッド給湯器」である。

リンナイ ハイブリッド給湯器
リンナイ ハイブリッド給湯器

 同社はこれまで、高効率ガス給湯器「エコジョーズ」を販売。エコジョーズは瞬時にお湯を沸かすことができる一方で、エコキュートと比べると、エネルギー効率やランニングコストの面では一歩譲る。この2つを組み合わせることにより、ガスと電気の利点を兼ね備えた給湯器が誕生した。

 

 キッチンやシャワーなど少量の湯を使用する場合には、夜間に沸かしておいたタンクのお湯でまかない、入浴時など大量のお湯を使用する際は、ヒートポンプとガスの併用で湯を供給する。こうして最適な熱源を選ぶことで、年間のCO2排出量は、既存のエコジョーズと比べて約20%、エコキュート460Lタイプと比べても約30%削減。導入コストは約7年間で償却可能だという(暖房併用時)。

エコキュート・ソーラーヒート(写真提供:矢崎総業)
エコキュート・ソーラーヒート(写真提供:矢崎総業)

 もう一つ紹介するのが、矢崎総業で2月下旬より販売を開始する「エコキュート・ソーラーヒート」だ。同システムは、"空気の熱"を利用するエコキュートと、"太陽熱"を利用するソーラーシステムを組み合わせた給湯システム。天気の良い日は太陽エネルギーで貯湯タンク内の水を温め、悪天候時はヒートポンプでお湯を沸かす。電力使用を極力減らすることにより、従来型の燃料式給湯器を利用した場合に比べて約7割のCO2排出量削減効果が見込めるという。

 

 (財)ヒートポンプ・蓄熱センターの試算では、日本中の空調や給湯をすべてヒートポンプに切り替えた場合のCO2削減ポテンシャルは、国内のCO2総排出量の約10%に相当する1.3億トン。地球温暖化防止に大きく寄与するヒートポンプ技術が、今後もどのように進化していくのか。大いに注目される。

 

文:加藤 聡

サイト

リンナイ

URL: http://www.rinnai.co.jp/

矢崎グループ

URL: http://www.yazaki-group.com/

ヒートポンプ・蓄熱センター

URL: http://www.hptcj.or.jp/

 

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