【インドネシア発】海水温上昇でサンゴの白化が深刻

 インドネシア海で、海水の表面温度が急上昇している。その結果、広範囲にわたって、サンゴの白化が進んでいることが、野生生物保全協会(WCS)が8月16日に発表した実地観測結果で明らかにされた。今年5月にスマトラ島の北部のアチェで、白化が報告されたのを受けて調査を開始したが、60%以上のサンゴが白化していることを観測し、白化は今後も進むと予想されている。

 サンゴの白化は、サンゴの組織内に生息する藻が何らかの環境的要因によって追い出された時に起きる現象。海水の温度変化などがサンゴへストレスを与えている証拠とも言われている。白化は回復することもあるが、そのまま進むと死んでしまうことも。

 

 WCSとジェームズ・クック大学(オーストラリア)、シアクアラ大学(インドネシア)の海洋生物学者たちからなるチームは、今回の観測を記録上もっとも急速に進行する深刻な白化だと報告した。

 

 今回の海面温度上昇はミャンマー、タイ、アンダマン・ニコバル諸島、インドネシア西部を含む、アンダマン海の温度上昇が原因だ。海洋大気庁の"コーラル・ホットスポット"のサイトによると、その地域の海温は今年の5月に長期平均気温を4℃上回る34℃を記録した。世界でも有数の生物多様性を誇るサンゴ礁の白化は今後も進むと予測される。

 

 インドネシア海域では、2004年に起こったインド洋の津波以前に、暗礁での乱獲が問題となっていたが、漁業の経営改善で順調に回復していたうえに、津波の際には余り影響を受けず、漁獲量も好調に維持し続けていた。それだけに、今回の白化が与える影響は大きなものとなりそうだ。特に、アチェ地方をはじめとするこの地域は、極度の貧困に苦しんでおり、多くの人がサンゴ礁から食料や生活の糧を得ている。今回の白化が与える打撃は大きなものとなると予想される。

文:温野 まき 翻訳サポート:中野 よしえ

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