福岡・大阪「生物多様性EXPO 2010」ウオッチングレポート

「生物多様性EXPO 2010」大阪会場
「生物多様性EXPO 2010」大阪会場

 2月と3月に福岡と大阪で、生物多様性をテーマとした初の総合的な展示会が開かれたのをご存じだろうか。生物多様性への配慮に取り組む法人や団体などが出展した「生物多様性EXPO 2010」だ。COP10を目前にして生物多様性への関心が世界で高まるなか、国内では生物多様性への認識が十分浸透しているとは言えないことから、環境省の主催により開かれた。

 この展示会にエコロジーオンライン・ネットワークから、NPO法人里山保全再生ネットワークが出展した。そこで出展者の目で見た感想も交え、「生物多様性EXPO 2010」をレポートしてみよう。

 

盛り上がりに欠けた福岡会場

 第1ラウンドの「生物多様性EXPO 2010 in 福岡」は、2月26日(金)〜28日(日)に福岡市博多区のマリンメッセ福岡で開催され、87の法人・団体・自治体が出展した。

 雨となった初日、ビジネスセミナー「生物多様性とビジネスチャンス〜リスクをチャンスに変える〜」は比較的盛況だったが、会場全体は終日、来場者よりも出展者が目立つような状況だった。

 2日目以降、天気は回復してきたものの、出足はにぶく活気に欠ける状態が続いた。唯一、にぎわいが見られたのが、27日の午後に開かれた「トークショー生物多様性ってなんだろう?〜いのちと暮らしを支える生物多様性〜」だ。来場者の目当ては、地球いきもの応援団のさかなクンによるトークショー。メインステージ前の座席がすべて埋まったほか、立ち見客も多く出た。

 しかし、3日間の合計来場者数は、主催者の公式発表でわずか8,285人。図らずも内閣府の世論調査で明らかになった「生物多様性について知っている人の割合は全国平均で36%足らず」という実態を裏付けるような結果に終わった。

 

連休と甲子園開幕のさなか、奮闘した大阪会場

 第2ラウンドとなったのは、3月20日(土)~21日(日)に大阪市北区の大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開かれた「生物多様性EXPO 2010 in 大阪」だ。136の法人・団体・自治体が出展した。福岡よりも会期が1日短い上に、連休であり、加えて21日から甲子園で選抜高校野球大会も開催されるなど、集客には不利な条件が揃っていたが、開幕間もない時間帯から家族連れなどが続々と来場した。

 福岡でも人気だったビジネスセミナーが大阪でも満席となったほか、20日に2回開催されたさかなクンによるトークショーも、整理券を求める人が長蛇の列を作った。ワークショップコーナーで開かれたさまざまなワークショップも常に席が埋まり、初日に9,076人が訪れて福岡の合計来場者数を突破。2日間の合計来場者数は主催者の公式発表で16,604人を記録した。これでも近年の環境系展示会としては極めて少ない数字だが、来場者と出展者がコミュニケーションを取り合う光景が方々で見られたのが印象的だった。

 

「生物多様性」への理解獲得はこれからが本番

 NPO法人里山保全再生ネットワークは、里山保全・再生団体への寄付金付き印刷用紙、「里山物語」で協力しあう中越パルプ工業と共同出展した。どちらの会場でも目的意識を持って情報収集に訪れた人や、「生物多様性」というキーワードでつながった出展者との出会いがあった。取り組みに関心を持ってくれた人から直接意見を聞くこともでき、意義のある展示会だったと考えている。

 一方、取材者の立場で見たEXPOは、出展料が無料ということも手伝ったのか、玉石混淆だったというのが正直な感想だ。取り組みの規模に差があるのは当然のことだが、中には生物多様性との関係性が希薄な出展者や、来場者とコミュニケーションをとろうとしない出展者がいた。

 総じて言えるのは、「生物多様性への理解を求める国内での活動は、まだ緒についたばかり」ということ。COP10が開かれる年にぎりぎり間に合わせたという感もぬぐえない。しかし、今年が生物にとって特別な年というのは人類の都合であり、生物界が刻んできたリズムから見ると単なる通過点に過ぎない。いま大切なのは、人類が一度は切り離した生物界との鎖を結び直そうと考えることだ。そのような取り組みを伝え合う「生物多様性EXPO」は、今後も継続してこそ価値が出てくる展示会と言えるだろう。

 

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