
気候危機やバイオダイバーシティを考える際にまず思い浮かべるのは森林だろう。気候変動による森林火災が都市に迫ればテレビや新聞で大々的に報じられる。一方、世界の珊瑚礁が白化現象を起こしても大した話題にならない。メディアも含めて一般の人の海に対する意識はそんなものだろう。
地球環境問題における海の貢献を現実的に見てみるとまた違った思いになるはずだ。海は我々の暮らしから排出される温室効果ガスの1/3を取り込み、さらに温室効果ガスによって生み出された熱の9割を吸収している。海という存在がなければ平均気温の上昇はどうなっていたかわからない。
私たちの暮らしを無言で支えてきた海にも大きな変化が現れている。その一つが海の酸性化だ。もともとアルカリ性の水質が二酸化炭素を大量に取り込むことによって酸性に傾き、サンゴが石灰化できず、カキ・ホタテなどは新しい殻や貝をつくれなくなり、エビ・カニなどは殻が溶けはじめる。このまま進むと海の酸性化による我が国の漁業の被害はなんと5千億〜2兆円に及ぶと言われている。
こうした現状にもっと海のことを考えてほしいと訴える研究者がいる。「アントロオーシャン」という人間がもたらした海の問題について考える本を出したクリスチーナ・ロメラ・カスティージョさん。バルセロナの海洋研究所に所属する研究者だ。
彼女が海のリサーチに出かけるとマイクロプラスチックに出会わない日はない。5mm以下のプラスチックゴミが海のあちこちに散乱している。マイクロプラスチックには生成段階で環境ホルモンにもなる化学物質が含まれている。それがまず魚のカラダに取り込まれ、人間の食卓へと帰ってくる。
海底に沈んだマイクロプラスチックには陽の光があたらない。水も冷たく酸素も少ないため分解されずらく、何百年も海の底に沈んでいる。将来、海の底の沈殿物を調べる研究者たちはこのありさまを見て、今の時代のことを「プラスチセン」と名付けるだろうと彼女は言う。
人間の暮らしから生まれたCO2やプラスチックのゴミが海に吸収され、新たなる問題に変化して人間界へ戻ってくる。海の現状についてに学ぶ時間はそう長く残されてはいない。
<参照リンク>
“Scientists will point to this era as Plasticene”.
翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部
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