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里山に道をひらく ― 徳島・橋本忠久さんと学ぶ「山づくりは人づくり」

 

徳島からお招きした橋本山林・橋本忠久さんによる4日間のワークショップが、佐野多田町の里山コモンスクールで開催されました。会場には神社の社務所をお借りし、どこかドラマのワンシーンを思わせる空間でスタート。しかし内容はいたって真面目。午前中の座学では、橋本山林の歩みや山との向き合い方を、初めての方にもわかりやすくお話しいただきました。

 

1日目:山に入り、道を構想する

午後は実際の里山へ。何十年も手が入っていない山に分け入り、どこにどう作業道を通すのかを参加者全員で考えます。山に不慣れな私たちはついていくのが精一杯。しかし橋本さんは軽やかに斜面を上下しながら、地形や水の流れ、木の状態を読み取り、道のラインを描いていきます。その姿だけでも圧巻でした。

 

2日目:いよいよ道づくりへ

ユンボを使った本格的な道づくりが始まりました。
「なるべく生かしたい木を残す」――それが大前提。掘った土は表面に均し、しっかりと点圧をかけて固めていきます。すると、山肌にやさしい登りやすい坂道が現れました。

橋本さんのユンボさばきは、まるで“猫の手”。
繊細で無駄がなく、掘り進めた先に植物があれば可能な限り丁寧にすくって移植するという高度な技術も見せていただきました。
 途中、「ペーパーユンボドライバー」の参加者にも丁寧に操作を指導。プロ・アマを問わず、それぞれのレベルに合わせたアドバイスが飛び交いました。

 

3日目:放置林に光が差す

夏を思わせる陽射しのもと、梅の花があわてて咲き始めるほどの暑さ。藤のツルに覆われた放置林に、少しずつ道が見えてきました。荒れていた山に風が通り、光が入り、人が入れる空間へと変わっていく――その変化は感動的です。

橋本さんは作業の合間にも、参加者一人ひとりに声をかけ続けました。操作のコツだけでなく、山を見る目、判断の仕方まで伝えてくださいます。

 

4日目:学びを未来へつなぐ

最終日。連休明けの平日にもかかわらず多くの方が参加してくださいました。締めくくりには佐野名物「新井屋の味噌まんじゅう」でひと息。徳島からはるばる来てくださった橋本さん、そしてご縁をつないでくださった田中さんにも、あらためて感謝の気持ちが広がりました。

 


「道づくりではなく、山づくり」

橋本さんは言います。

道づくりは、基本がわかっても、よその現場を見極められるようになるには20年以上かかる。

そして、いつも大切にしている3つの言葉。

  • しっかりと(点圧)

  • 丁寧に

  • 美しく

この3つを意識すれば、結果はついてくる。

さらに、印象的だったのは次の言葉です。

自然のために行動しても、経済性と環境性のバランスを取らなければ生活は成り立たない。継続できることが大切。子ども、孫、ひ孫のために何ができるかを考え、予測のもとで動く。

皆伐を止め、適切に道を入れ、計画的に伐採する。
それは単なる林業技術ではなく、未来への責任の取り方でもあります。


今回のワークショップで私たちが学んだのは、単なる「道のつくり方」ではありませんでした。

道づくりではなく、山づくり。
そして最終的には、人づくり。

里山に一本の道ができるたびに、そこに関わる人の視野もまた広がっていきます。持続可能な地域づくりは、こうした地道な学びと実践の積み重ねから始まるのだと実感した4日間でした。

 

レポート/EOL事務局

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