小さな奇跡の見つけ方「パッシブカルチャー」を目指して ②

エコロジーオンラインで支援をしたネパール地震でテント生活をする被災者のご家族
エコロジーオンラインで支援をしたネパール地震でテント生活をする被災者のご家族

前回の連載からはじまった日本に眠っているパッシブカルチャーを掘り起こす旅。今回は愛知で発見した「からくり」の伝統について書くつもりでした。

しかし、熊本で大地震が発生。その後の報道で気象庁も解析困難な地震の連鎖が起きているという事実を知り、この大地震に関して考えてみることにしました。

ネパール大地震で警告された地球の激動

昨年4月、ヒマラヤの麓にある国、ネパールで大地震が起きました。僕らの団体も義援金をあつめ、現地で事業を手がけている友人に託し、被災したみなさんの仕事の再生を手伝う事業を実施しました。この時の地震の規模はマグニチュード7.8。8,000人以上の尊い命が失われました。

この大地震に対して、アメリカのニューズウィーク誌が「MORE FATAL EARTHQUAKES TO COME, GEOLOGISTS WARN(大地震はこれからもたくさんやってくると地質学者が警告)」という記事を配信しました。

この記事によるとネパールの地震には気候変動による大きな影響があり、水の上に浮かんでいるようなインド半島でモンスーンによる活動が活発化し、地表において大量の水が移動したことで地震が起きやすくなっていたのだとしています。

地球温暖化の影響は地震だけに止まりません。なんと最近では地球の自転まで影響を受け、極点がかつてない方向に動き始めました。この現象自体は直接的に何かの被害をもたらすものではないようですが、人間の影響がかなり大きくなっている証拠だと言えます。地球温暖化によって火山の蓋となっていた冠雪がとけて火山の噴火も起きやすくなっているという報告もあります。地殻やマントルの動きは国境を越えて地下でつながっています。温暖化のせいで私たち支える地球自体が不安定化してしまったのです。

自然に向き合った災害対策を!

これまで私たちは他の動物が持たない知恵をもってアクティブに文明をつくりだしてきました。雨、風、暑さ、寒さ、地震などに強い家づくりも自然災害をいかに防ぐかをメインに作り上げられました。どこでも同じやり方で自然に対する防御策をつくってきました。

しかし、地球温暖化が当たり前の世の中になってくると家づくりの質もかわってきます。それぞれの地域にあった家づくりも必要になってくる。海が近い、山が近い、川が近い、晴れが多い、風が吹く、地盤が弱い、雪が多い、湿気が多い、地震が多い、建物が多い、畑が多い・・・。そういう諸条件も踏まえて家づくりを提案することが重要になるのではないでしょうか。極端な例をあげるとこの地域には家を建てない方が良いと提案することだって必要になってくるでしょう。

今回の地震で被害を受けた熊本城は地震の時に瓦は振るい落とすことで建屋の倒壊を防いでいたと話題になっています。古人は人間の力ではどうにもならないものをいかに受け流すかを考えて家をつくりました。このように、自然を学び、自然を生かすパッシブの知恵こそが、これからの文明の基本になっていくのではないでしょうか。

短距離走と長距離走の良さを見つめて

自分が代表を務めるエコロジーオンラインはこれまでも様々な被災の支援や復興に関わってきました。どんな事例であっても息の長い支援が必要であることは間違いありません。今回も多くのボランティアが被災地に足を運ぶでしょう。その姿は素晴らしいものです。一方、5年が過ぎた東日本大震災の被災地ではボランティアの姿がまばらになり、「私たちは忘れられてしまった」と嘆く人たちもいます。

東日本大震災に5年にわたってボランティアとして関わって感じたことがあります。人命救助のような生命に関わるものは短距離走。精神的、経済的な再生に関わるのは長距離走。そのどちらも必要だと思うようになりました。

私たちの活動はどちらかというと後者だと言えます。息の長い支援を考えると、長距離走のように、高地、低地、アップダウン、夏、冬、道路の状況などの環境によって走り方がかわります。その地域や個人が持つ特徴を知らないと伴走はできません。最近、家づくりも同じようなものではないのかなと思い始めました。しっかりと地域の自然環境を学んだうえで長く住める家を提案する。みなさんと一緒に新しい時代をつくって行きたいと切に願います。

文 / 上岡裕
(協力:日本住宅新聞)

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