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【普通の人のSDGs入門】「環境か経済か」から「環境も経済も」へシフトチェンジ

「環境」「社会」「経済」という3本の柱


持続可能な開発目標(SDGs)は,極度の貧困と飢餓の撲滅などを目指す「ミレニアム開発目標(MDGs)」を継承する形で生まれました。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかで2030年までの数値目標として掲げられたのがSDGsです。


これまでのMDGsとの違いは地球温暖化や生物多様性、砂漠化への対応など、地球環境問題の改善についても記載されたことです。今、苦しんでいる人たちを経済的に救えても、地球環境を破壊する現在のライフスタイルでは持続可能にならないということで進化を遂げました。誰もとり残さないために「環境」「社会」「経済」全体を持続可能にしようという目標ができたわけです。

 

経済の世界ではここ20年で「環境報告書」が「サステナビリティレポート」に変わり、企業の持続可能性を考えるうえで、ジェンダー、人権、労働環境などの社会的な取り組みについても重視されるような社会になってきました。

 

企業市民として地域の自然環境を破壊したり、温室効果ガスなどで地球温暖化をもたらしたりするようなことは避けなければいけません。それにあわせて幼児労働や過酷な労働環境、様々なハラスメントが社会に知られると自社のブランドに傷がついて持続可能性が失われます。目先の企業収益が伸びていても、気候変動による影響で原料が高騰したり、ジェンダーの偏りがあって労働力が手に入らなくなったり、人権の問題で社会的な批判を受けたり、将来の不安はつきまといます。そうした不安を減らすためにサステナビリティが重視されるようなりました。こうした企業側の変化がSDGsにも影響を与えています。

 

国連は「持続可能な開発」を、将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、現世代のニーズを充足する開発と定義。持続可能な開発を達成するためには、経済成長、社会的包摂、環境保護という3つの要素を調和させることが大切だと説いています。持続可能な経営を目指す企業と同様にこの3つの要素のバランスが必要になるわけです。

住民の暮らしのために丸裸になったマダガスカルの森林は「経済」と「環境」の両立の難しさを物語る。
住民の暮らしのために丸裸になったマダガスカルの森林は「経済」と「環境」の両立の難しさを物語る。

「環境か経済か」から「環境も経済も」へシフトチェンジ


エコロジーオンラインを始めた頃、大手家電メーカーの環境担当者と意見交換をしたことがあります。その方はとても正直な方で環境保護の支援を求めた自分にこんな言葉を返してきました。

 

 「僕らは日々競争をしているんです。その競争の負担になるようなことはできないんです。すべての企業が一斉にやるような状況になれば別ですけどね。ブランドイメージがあがるようなことなら支援ができると思いますよ。たとえばたくさんの子どもの笑顔が得られるとか・・・」

 

当時はまだ、SDGs的な考え方は一般的ではなく、CO2の排出に関しても現在ほど厳しくありませんでしたし、自社のメリットにならないことをやることはあまりありませんでした。それが大きく変わり始めたのが、企業の社会的責任を投資の基準の一つとしたSRI(社会的責任投資)をする投資家が増え、企業もCSR(企業の社会責任)を意識しないといけなくなってきたことがあります。現在は持続可能ように思えても、環境や社会が破壊されたら、企業の収益に大きな影響が出る。そう思う投資家の存在が企業の壁を壊してきました。

 

SDGsをテーマにした活動をする企業が増えている背景にはこうした理由とともに社会的な意識が高いと言われるZ世代の存在があります。社会の持続可能性を損なう企業に関しては投資も集まらないし、優秀な人材も集まりづらくなっています。環境も、社会も、経済も、三兎を追うことが必要になったわけです。

 

東日本大震災以降、社会起業家を目指す若者が爆発的に増えました。高学歴の大学生のなかにも大手企業や官僚を目指さず、社会に役立つ企業を立ち上げようという人たちが増えてきました。現在、気候変動の抑制のために行うCO2の吸収事業や先進的な再生可能エネルギーの開発、プラスチックゴミの再資源化、脱フードロスで経費を削減するなど多様なビジネスが生まれています。

 

補助金や金利の優遇、各種クラウドファンディングサービスなど、多くのサポートも得られるようになり、フレッシュな起業家たちが社会に溢れつつあります。若く、信念があり、小回りがきく彼らのような行動は大手企業にはできません。共創という形で企業のSDGsの生態系を形作っていると言えると思います。

 

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文 / エコロジーオンライン理事長 上岡裕

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