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通常、生物多様性の保全というと、絶滅の危機にあるパンダやトラ、あるいは美しいサンゴ礁などが思い浮かべられる。しかし、地球の生態系が機能するための土台を支えているのは、この微生物たちだと言える。
彼らは、私たちが当たり前のように享受している生命維持サービス、すなわち「生態系サービス」の根幹を担っている。例えば、土壌の中で有機物を分解し、植物が利用できる栄養に変える物質循環、大気中の二酸化炭素や窒素を固定し、気候を調節するバイオジオケミカル・サイクル、さらには人間の消化管に生息し、私たちの健康や免疫システムを支える共生関係など、その役割は多岐にわたる。
もし、この微生物のコミュニティが破壊されれば、その影響は連鎖的に地球全体に及ぶ。土壌が痩せて作物が育たなくなり、気候の安定性が失われ、病原菌が制御不能になるなど、人間の生存そのものが危うくなるのだ。
保全の対象を広げる必要性
これまでの保全活動は、主に特定の種や特定の生息地の保護に焦点を当ててきた。しかし、気候変動や公衆衛生といった現代の複合的な危機に対応するためには、この「見えない生命」への保全の焦点を広げることが求められている。
私たちは、単に森林や海洋という「場」を保護するだけでなく、その「場」の中で生命を支えている微生物の多様性を守るという、新しい視点を取り入れる必要がある。例えば、農地の土壌微生物を豊かに保つことは、化学肥料への依存を減らし、食料安全保障に貢献する。また、熱帯雨林や深海といった場所の微生物を研究し、その重要性を理解することは、地球の回復力を守る上で欠かせない。
科学と政策の新しい道
この新しい保全の道を進むためには、技術的な進歩と政策的な転換が必要である。まず、ゲノム解析技術の発展により、これまで知られていなかった微生物の多様性を明らかにし、彼らが生態系で果たしている役割を解明することが求められる。そして、その科学的知見を基に、生物多様性保全に関する国際的な条約や国家戦略に、微生物の保全を明確に組み込む必要がある。
目に見えるものを守ることはもちろん大切だが、その背後で健気に働き、地球全体を支えている「99パーセントの小さな命」に感謝し、彼らの多様性を守ることこそが、私たち人類がこの惑星で長く健康に生きるための、根本的な道筋であるといえるだろう。
<関連サイト>
The road ahead: Why conserving the invisible 99% of life is fundamental to planetary health
翻訳・文 / エコロジーオンライン編集部(AIを使用)









